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【24-91】パラレルリンクロボットの設計ハードルを下げる数学ツール(その2)

陳 曦(科技日報記者) 2024年10月02日

天津大学機械工程学院の孫濤教授のチームは、パラレルリンクロボットの設計・応用における革新的な新理論を打ち出した。「工学的経験を利用して試行錯誤を繰り返し、何度も設計する」という従来の方法プロセスを改め、数学の新しい法則の発見、力学の新しいメカニズムの解明、機構学の新しい方法の提起という3つの面から着手して、高性能パラレルリンクロボットを発明・設計・調整する方法を打ち出した。

その1 よりつづき)

性能設計と精度調整レベルの向上

 性能は稼働環境におけるロボットの作業能力を直接決定づける。その優劣は機構のトポロジーに依存するだけでなく、ロボットの尺度パラメータとも密接に関連している。

 孫氏は「人間と同じように、体格や身長、体重など複数の要因が力の強さに影響する。そのため、私たちがパラレルリンクロボットを設計する際には、『遺伝子』であるトポロジーの構造パラメータを考慮するだけでなく、『身長・体重』を示す尺度パラメータも考慮しなければならない。パラレルリンクロボットのトポロジーにはさまざまなタイプがあり、関連するパラメータの数が膨大で、目標性能の結合関係が複雑であるため、ロボットのトポロジーと尺度パラメータを同時に設計することは非常に難しい」と述べた。

 チームメンバーの霍欣明さんは「多元的な性能ニーズに直面して、トポロジーと尺度パラメータの優先ルールをどうやって打ち出すのか。これがパラレルリンクロボット設計のカギだ」と強調した。

 研究チームは、打ち出した数学ツールを利用してパラレルリンクロボットの「トポロジー、尺度、性能」のマッピングモデルを構築。シーンごとのロボットの性能に対するニーズに基づき、複数の性能がバランスを取りながら協力する方法を打ち出し、パラレルリンクロボットのトポロジーと尺度パラメータの最適な選択と設計を実現した。

 パラレルリンクロボットの設計から応用に至るまでの最大の問題は、ロボットの作業精度であり、これは主に、部品の加工・実装誤差などの幾何誤差や、弾性変形などの幾何誤差以外の誤差によるものだ。

 孫氏は「誤差の識別と補正はロボットの精度を調整する最も直接的かつ有効な手段だ。私たちは誤差伝達モデルを構築することで、誤差のメカニズムを明らかにし、誤差補正のための等価運動制御モデルを構築した。そして、パラレルリンクロボットの精度調整におけるオンライン補正の新たなメカニズムを打ち出した。これにより、パラレルリンクロボットの任意のポーズにおける、複数ソースによるリアルタイム偏差補正という難問も解決した」と説明した。

大規模言語モデルの開発で使用難易度を低減

 パラレルリンクロボットの革新的な設計と調整理論は、加工や溶接、実装、手術・リハビリなどの高性能パラレルリンクロボットの革新的設計や調整を指導するものであり、パラレルリンクロボットの航空・宇宙、自動車・船舶、医療・ヘルスケア分野などにおける応用を推進している。

 孫氏は「例えば私たちが革新的に設計した高剛性のパラレルリンク・研磨・切断一体型加工ロボットは、すでに中国一汽や濰柴動力など30以上の大手企業で300台(セット)が応用されており、多様な種類、材料、尺度の鋳造部品の効率的な加工という課題を解決した」と紹介した。

 チームメンバーの宋軼民さんは「私たちが設計した高積載率パラレルリンクドッキング組立ロボットは、中国航天科技集団有限公司第五研究院の低軌道衛星のキャビンパネルや、ある型の航空機キャビン内のフレキシブル組立に応用されており、中・大型部品の組立という難問を解決した」と語った。

 医療・ヘルスケア分野もこの革新的な理論の恩恵を受けている。世界初のウェアラブルパラレルリンク骨折手術・リハビリ一体型ロボットは、中国人民解放軍総医院や天津医院などで、これまでにモデル・動物実験100件、臨床試験85件が行われ、骨折手術とリハビリが分断しているという臨床上の課題を解決した。

 孫氏は「今後はパラレルリンクロボットの設計と応用のハードルをさらに下げていく。エンジニアにとって、この理論はまだ、数学的ハードルが比較的高い。より多くの人にこの理論を広めるため、私たちはパラレルリンク機構の大規模言語モデルを構築しているところだ」と説明した。

 将来の展望について孫氏は「トレーニングされて成熟した機構の大規模言語モデルによって、ユーザーのニーズに基づいたパラレルリンクロボットの設計が可能になる。機構のイノベーションが実現し、パラレルリンクロボットの性能が最適化されるだろう」と述べた。


※本稿は、科技日報「协同合作让养老机器人更贴心」(2024年8月13日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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