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【25-003】急増する電子廃棄物、どう対応すべきか(その2)

都 芃(科技日報記者) 2025年01月08日

その1 よりつづき)

「廃棄物を宝に変える」難しさ

 電子廃棄物の問題は、世界において解決が急務な環境問題となっている。

 国連訓練調査研究所(UNITAR)がこのほど発表した報告書「グローバル電子廃棄物監視2024」によると、電子廃棄物の排出量の増加ペースは、回収量の増加をはるかに上回っている。2022年に排出された6200万トンの電子廃棄物には、3100万トンの金属、1700万トンのプラスチック、1400万トンのその他の材料(鉱物、ガラス、複合材料など)が含まれていた。うち、適切に回収され、再利用された材料は4分の1にも満たない。このほか、主要原材料の回収技術の特許出願数も大幅増には至っていない。

 電子廃棄物を宝に変えるのが難しいのはなぜか。

 まず、処理の難しさが挙げられる。「グローバル電子廃棄物監視2024」によると、2022年に世界で排出された電子廃棄物に含まれていた金属の経済的価値は910億ドル(1ドル=約158円)と試算されている。価値ある二次原材料は銅(190億ドル)、金(150億ドル)、鉄(160億ドル)だが、現時点で電子廃棄物の管理によって生み出されたのは280億ドル相当に過ぎず、その他の大半は、焼却や埋め立て、不適切な処理によって損失した。

 次に、コストの問題が挙げられる。電子廃棄物を回収するには、たくさんの人的・物的資源や資金を投入して、収集、輸送、分解、処理を行わなければならない。また、電子廃棄物の発生源が分散しているため、回収のハードルが高く、効率が悪く、コストが一層高くなっている。「グローバル電子廃棄物監視2024」によると、2022年、世界の電子廃棄物管理の経済効果は510億ドルだったが、コストは880億ドルだった。つまり、370億ドルの赤字ということになる。

持続可能な発展の実現を

 山積みの電子廃棄物をめぐる課題を前に、AIが生み出す電子廃棄物の増加という問題を避けるためには、どうすればいいのか。

 これに対し、中国科学院城市環境研究所の汪鵬研究員は「私たちが実施している予防性または先見性のある研究は、理解や行動が早ければ早いほど、利益も大きくなるという基本的な原則に従っている」と説明。汪氏のチームが提起する方向性あるリサイクル経済の方策は、データセンターで寿命が尽きたデバイスを減らし、再利用し、修復し、回収するなどにより、排出する電子廃棄物を減らすことを目標としている。

 汪氏は、1つの製品について言えば、さらに高性能のハードウェアを実現し、資源の消耗を減らすことができれば、生み出される電子廃棄物の数も相対的に少なくなるが、設計が複雑になるなどの理由で、処理の難易度も上がると分析する。また、性能が高まることで消費量が急増し、リバウンド効果が発生することを考えると、ハードウェアの性能が高まるにつれて、電子廃棄物の量も増え、その処理の難易度も上がっていく。そのため、電子廃棄物の末端の処理や回収は、リサイクル経済において軽視できない部分になる。これらの廃棄物には、価値の高い金属資源が豊富に含まれているが、多くの有害物質も含まれている。メーカーは、全ての材料が適切に処理され、二次汚染が発生しないようにする必要がある。

 汪氏はまた、ハードウェアだけでなく、アルゴリズム開発の段階でモデルの計算ニーズを適切に削減する必要があるとし、「関連措置が問題の発生源に近づけば近づくほど効果が高まる。アルゴリズムのレベルで最適化を実施すれば、エネルギー消費とコストを削減でき、全体的に大きな効果をもたらす」との見方を示した。

 中国は、電子廃棄物の回収・処理を非常に重視しており、ここ数年はそれ等に関する法律・法規体系、チェーン管理、企業の監督・管理について、大々的な取り組みを実施している。中国生態環境部(省)固体廃棄物・化学品司の郭伊均司長は会見で「2024年9月末時点で、中国国内の正規の処理企業95社が回収・処理した電子廃棄物は約7600万台(セット)で、約37万トンの廃棄プラスチック、52万トンの廃棄銅・鉄・アルミニウム・合金などを回収した。それらはいずれも川下の企業によって再利用された。分解処理の過程で発生した各種危険廃棄物やその他の環境汚染リスクがある物質はいずれも、規範に基づいて利用・処理されている。中国国内の電子廃棄物の規範に基づく回収・利用状況は改善が続けている」と紹介した。

 AI電子廃棄物の問題について汪氏は、「関係当局が関連政策を導入し、企業が速やかに行動を起こし、AIの発展をより責任ある持続可能なものにするべきだ」と提案した。


※本稿は、科技日報「警惕!AI电子垃圾正在激增」(2024年12月2日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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