【25-002】急増する電子廃棄物、どう対応すべきか(その1)
都 芃(科技日報記者) 2025年01月07日
第7回中国国際輸入博覧会で展示された電子廃棄物100キロによって作られたレーシングカー「Recover E」。(画像提供:視覚中国)
人工知能(AI)はここ数年、人々の日常生活への浸透を加速させており、人々の生活を便利にしている一方で、AIがもたらす環境問題も軽視できない状況となっている。中国科学院城市環境研究所の汪鵬研究員らは2020~30年の間に、生成AIが生み出す電子廃棄物が約1000倍に急増すると予測している。研究成果はこのほど、学術誌「Nature Computational Science」にオンライン掲載された。
国連訓練調査研究所(UNITAR)がこのほど発表した報告書「グローバル電子廃棄物監視2024」によると、22年に世界で排出された電子廃棄物の量は過去最多の6200万トンで、2010年比82%増となった。世界では一人当たり7.8キロもの電子廃棄物を排出している計算になる。電子廃棄物の急増を背景に、AI電子廃棄物の問題をいかに解決するかが、大きな課題となりつつある。
可視化評価を実現
生成AIは典型的な資源密集型産業で、その技術の進歩と応用は、基盤となるハードウェアの規模拡大に大きく依存している。AI応用の普及に伴い、計算能力のニーズが高まり続け、関連する計算能力センターのハードウェアアーキテクチャはより複雑化し、その重さも増える一方となっている。
半導体メーカーNVIDIAの黄仁勲(ジェンスン・フアン)創業者兼最高経営責任者(CEO)は以前、「EFLOPS(エクサフロップス、浮動小数点演算を1秒間に100京回行うことを示す単位)級のコンピューターは、60万個の部品で構成され、重さは1.36トンに達する」と説明した。
業界の専門家は「計算能力センターのサーバファームに通常含まれるGPU(画像処理装置)やメモリーモジュール、メモリーデバイスといった複数の高性能コンピューターのハードウェアの寿命は一般的に3年ほどだ。寿命が尽きると大量の電子廃棄物が発生する」と指摘する。
長年、AIに基づく物質リサイクルデジタル・スマート工学とリスク管理の研究に携わってきた汪氏は「生成AIの将来におけるサービスカバー率を現時点で正確に予測するのは難しいが、どうなるとしても、AIが生み出す電子廃棄物の問題に対応できるように、今から準備しておくべきだ」と訴える。
汪氏によると、生成AIの計算能力を左右するハードウェアのニーズ、および排出される電子廃棄物の量を合理的かつ効果的に可視化して評価するために、チームは「計算能力物質フロー」という新たな方法を編み出した。汎用AIの応用サービスや基盤となるハードウェアを解離分析し、「ニーズ、アルゴリズム、計算能力、ハードウェア」の4レベルに分ける方法だ。まず、生成AIが受け取るサービスのニーズを算出し、そのニーズとさまざまなアルゴリズム間の対応関係を分析することで、生成AIが必要とする計算能力の大きさを確定する。その後、必要なGPUハードウェアの数や付属の関連ハードウェアのニーズを導き出す。
研究結果によると、最も速いスピードで発展した場合、生成AIが2023~30年に生み出す電子廃棄物の量は累計500万トンに達する可能性がある。排出される電子廃棄物には150万トンのプリント基板や50万トンのサーバーのバッテリーが含まれている。これらには有害な鉛やクロムなども含まれている可能性があり、適切に処理されなければ、深刻な環境汚染の原因になる。また、最も保守的な開発モデルでも、その期間に排出される電子廃棄物の量は120万トンに達すると見られている。
(その2 につづく)
※本稿は、科技日報「警惕!AI电子垃圾正在激增」(2024年12月2日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。