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【25-037】「日常業務の15%以上を代行」AIエージェント時代が現実に(その2)

崔 爽(科技日報記者) 2025年04月30日

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2024年中国国際サービス貿易交易会(CIFTIS)の展示エリアで、家庭向けのAIエージェントを体験する来場者。(画像提供:視覚中国)

AIアプリケーションは今後、爆発的な成長が予測されており、チャットボットの形態にとどまらない新たなスーパーアプリケーションが登場する可能性もある。

その1 よりつづき)

 金沙江創業投資基金のマネージングパートナーである朱嘯虎氏によると、アリババのAIアシスタント「新夸克(Quark)」の実践は、業界にとって一つの良い方向性を示しているという。それは、ユーザーのニーズに応えるスーパーインテリジェントエージェントを「AIスーパーフレーム」で接続するという考え方である。

「AIスーパーフレーム」は、新夸克の中核的なインターフェースであり、アリババの大規模言語モデル「通義(Tongyi)」による推論やマルチモーダル大規模言語モデルを基盤として、仕事・学習・生活におけるさまざまなAIニーズに対応する。

 現在、市場において主流となっているAIの製品形態はチャットボットであるが、新夸克はAIとの対話や深層思考、深層検索、深層研究、深層実行などの統合を目指している。そのモバイルアプリのインターフェースは、対話ボックスの下に「AI文書作成」「AI画像生成」「学術検索」「AI PPT」「翻訳」などの機能が並んでいる。ユーザーが指示を入力すると、自動で意図を認識し、整理・計画した上で、さまざまなモデルやAIエージェントモジュールを呼び出して、タスクの実行を支援する。

 学習シーンを例にすると、ユーザーがある難題をアップロードすると、夸克はまず、問題のタイプを分析・判断する。その後、インテリジェントハブが判断結果に基づいて、専用AIエージェントを呼び出して問題を解き、問題の重要な知識ポイントと難点を整理・明確化する。最終的には、AIエージェントが要点を整理し、解法のアプローチと豊富な回答情報を提供する。このプロセスにおいて、夸克は「AI問題解決マスター」といった垂直型AIエージェントを呼び出し、ユーザーがその問題だけでなく、類題の解き方もマスターできるようサポートする。

 夸克開発チームの見解では、ユーザーがAI検索に対して「多機能・使いやすさ、手軽さ」を求めており、AI機能をさらに統合、アップデートし、一つの「フレーム」で、ユーザーの各種ニーズに対応できるようにする必要がある。アリババ集団の呉嘉副総裁は「今回アップデートされたバージョンは、新夸克のひな型に過ぎない。今後の継続的なアップデートやモデル能力の向上に伴い、夸克の『AIスーパーフレーム』が『ドラえもんのポケット』のような存在になり、ユーザーが『AIの世界』に入るツールになっていくことを願っている」と述べた。

豊富な製品形態

 AI時代における各種トラフィックの入り口として、各種スーパーアプリケーションは現在、インターネット企業におけるAIアプリケーションエコシステムの中心になりつつある。

 主要インターネット企業の中では、字節跳動(バイトダンス)が開発したAIチャットボット豆包(Doubao)は、ユーザーが非常に多いショート動画共有アプリ「抖音(中国版TikTok)」を活用し、一時は中国で最も急速にユーザー数を増やしたAIアプリとなった。また、騰訊(テンセント)が開発したAIチャットボット「元宝(Yuanbao)」は、「DeepSeek(ディープシーク)」の導入で一気に注目を集めた。騰訊は「元宝」の大規模な広告投入戦略を採用。その効果と国民的アプリ「微信(WeChat)」の誘導もあり、「元宝」は短期間でユーザー数を一気に増やした。

 夸克の拡大も目覚ましい。今年2月に発表された「AIGC RANK中国AIアプリケーションランキング」によると、夸克の1日当たりの平均アクティブユーザー数は3429万8000人で、2カ月連続で業界トップとなった。

 AIスーパーアプリケーションの機能がさらに充実し、ユーザー体験が継続的に改善されるにつれて、AI時代のトラフィックの入り口をめぐる競争はますます激化している。中国通信標準化協会メディア融合技術・標準推進委員会の包冉副主席は「『ディープシーク』の急速な導入により、マン・マシン・インタラクションのインターフェースは本質的に変化し、従来の意味におけるCUI(キャラクター・ユーザー・インタフェース)やGUI(グラフィカル・ユーザー・インタフェース)に別れを告げ、本当の意味でのナチュラル・ユーザー・インターフェースになっている。つまり、自然言語による対話を通じて、ユーザーのニーズと情報システムの能力のアウトプットが新たな均衡に達し、製品の形態もより柔軟で活発になる」との見解を述べた。

 呉氏は「ユーザーのニーズに関連するイノベーションが継続的に進み、夸克の『AIスーパーフレーム』の内容や領域も拡大していく。これにより、AI時代に、さらなる想像空間をもたらすことになるだろう」と語った。


※本稿は、科技日報「超级智能体时代渐行渐近」(2025年3月24日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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