【25-049】大規模言語モデルを企業はどう活用すべきか(その1)
葉 青(科技日報記者) 2025年06月09日

中関村展示センターので「人工知能(AI)+」の展示を見る来場者。(撮影:鞠煥宗)
中国では近年、AI大規模言語モデルが急速に発展し、各業界で活用され、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している。中国の国家インターネット情報弁公室が発表したデータによると、2025年3月31日時点で、中国では計346件の生成AIサービスが届け出を完了している。
企業はDXの中心層であり主戦場だ。大規模言語モデルはどのようにして企業のDXをさらに促進するのか。業界への応用を加速させるためには、どのようなハードルを乗り越える必要があるのか。これらの問題について、科技日報の記者が取材した。
「スーパーエキスパート」の活躍
大規模言語モデルはどのようにして自動車産業を再構築するのか。「一汽トヨタ(第一汽車とトヨタの合弁会社)」と騰訊(テンセント)の協力がその一例と言える。一汽トヨタはテンセントのAI大規模言語モデルを導入し、大規模言語モデルのミドルプラットフォーム構築を模索するとともに、それをデータ分析やセキュリティ保護、インテリジェントカスタマーサービスなどのプロセスに応用し、自動車のライフサイクル全体のマーケティング事業システムを全面的に強化している。
AI時代におけるセキュリティの新たな課題に直面し、両社は共同で自動車のセキュリティ防御線を強化した。テンセントスマートモビリティソリューション総経理の姚振氏は、「我々が共同で開発した『デバイスとクラウドが融合したデジタルスマート化セキュリティプラットフォーム』により、セキュリティ事象の検出応答時間が平均2時間弱に短縮された」と紹介した。このプラットフォームにより、一汽トヨタは日常のセキュリティ運用や攻撃防御演習において、セキュリティ事故ゼロ、攻撃による業務中断ゼロ、セキュリティ問題報告ゼロを実現している。
一汽トヨタは、今年1月にテンセントクラウド大規模言語モデル知識エンジンに接続して以来、スマートオンラインカスタマーサービスボットの単独解決率が37%から84%に向上し、月平均で1万7000件の顧客からの問い合わせを自動で解決している。
「デジタルブレイン」としての大規模言語モデルは現在、自動車業界だけでなくあらゆる業界に深く浸透し、生産性革命を推進している。
このほど開催された第17回霊山科学フォーラムで、雲従科技集団股份有限公司(以下「雲従科技」)のソリューションチーフアーキテクトである葉統生氏は「大規模言語モデルを導入することで、企業はこれまで分断されていた業務ノードを統合し、データ活用や状況に応じたビジネス応用を実現できるようになる。大規模言語モデルは構造化したデータを処理できるだけでなく、テキスト、画像、伝票などのマルチモーダルデータを理解し応用することができ、それによってデータ層、インタラクション層、アプリケーション層でのビジネスモデルの変革を実現する。この方法により、データ分析の次元がより多くなり、可視化の程度がより高まり、リソース配信方法が多様化することで、企業はさまざまな状況下で多様なアプリケーションを派生させ、DXを加速させ、ビジネス効率を向上させることができる」と語った。
人工知能・デジタル経済広東省実験室(広州)の研究員で、華南理工大学教授の譚明奎氏は、「大規模言語モデルは『スーパーエキスパート』の機能を持つため、企業はカスタマイズされた方法で、必要な管理、生産などの経験や技術を統合することができ、まるでベテラン専門家を雇っているかのようになる。大規模言語モデルは強力な学習能力を持ち、企業が蓄積した膨大な過去の経験やデータを記録し、それらを分類・統計することができる。これを踏まえた上で、企業は管理や生産の過程においてさまざまなデータを迅速に呼び出せるだけでなく、それらを十分に開発し、コスト削減と効率向上を実現することもできる」と語った。
特定分野への注力がコンセンサスに
大規模言語モデルの産業応用が力強い成長を示す一方で、企業が大規模言語モデルを直接導入する際には、必ずしも順調ではないことも無視できない。大規模言語モデルと企業固有の知識の乖離、出力に時間がかかること、回答の範囲が広過ぎること、特定の業務における解決効果が低いことなどは、企業が直面する共通の課題だ。
これらの問題に対し、雲従科技スマート政務業界総監の程飛氏は「従来型企業はAI技術が不足しており、一方でAI企業は技術を理解していても従来型企業については詳しくない。そのため、大規模言語モデルの実装はまだ思うように進んでおらず、『環境不適応』さえ起きている。現在、技術と業務の両方に精通するエキスパートがAI技術と業務の深い融合をさらに推進することが急務となっている」と実感を込めて語った。
(その2 へつづく)
※本稿は、科技日報「大模型成"新标配",企业如何用得好」(2025年4月14日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。