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【25-115】AIフォー・グッド:アルゴリズムで人々の暮らしを守る(その1)

張蓋倫(科技日報記者) 2025年12月19日

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教室でVRゴーグルを体験する江蘇省南京市小行小学校の児童。(撮影・泱波)

 魔搭(ModelScope)コミュニティの開発者である徐帆氏は、半年をかけ、アリババクラウドのクラウド大規模言語モデル「Qwen-Omni」のAPIを基盤として、コストパフォーマンスに優れたリアルタイム環境認識システムを開発し、100元(1元=約22円)ほどのコストでAIゴーグルを作り上げた。このゴーグルは、点字ブロックを自動認識し、進行方向を案内するほか、信号機や横断歩道も識別し、音声で周囲の環境を説明することもできる。

 先日、徐氏が視覚障害者向けAIゴーグルの体験動画をネットに投稿したところ、予想を上回る反響があった。

 コメント欄には「10万元を支援したい。見返りは求めないので、これを続けてほしい」や「量産化やカスタマイズ化を実現させ、必要とする人々により多くの支援を届けてほしい」などの声が寄せられた。

 徐氏はこのほど、「アリババAIフォー・グッド行動報告2025」の発表会場でこのエピソードを紹介した。テクノロジーの意義は、単に宇宙を征服することではなく、人々の日常の暮らしを守ることにもある。AI技術をいかに善用して社会的課題を解決し、公益活動に取り入れ、より大きな社会的価値を生み出すかについて、ますます多くの人々が注目している。

技術の進化を導く「羅針盤」

 報告はAIフォー・グッドのビジョンを提示した。AIフォー・グッドは技術が成熟へ向かうための「試練の場」であり、企業が持続可能な発展を実現するための内生的原動力であると同時に、社会的信頼を築く上で重要な役割も担う。

 報告はまた、「人間中心」の行動枠組みを提示した。これは、「安全性・信頼性」「プライバシー保護」「包摂性・誠実性」「制御可能性」「オープンな共同ガバナンス」「グリーン・低炭素」という6つの価値観の上に構築されている。報告の発表チームは、技術価値・商業価値・社会価値は有機的に統一できると考えており、AIフォー・グッドは技術が成熟した後の「お飾り」ではなく、技術の進化を貫く「導きの羅針盤」だとしている。課題への最善の対応は、安全と発展の間で揺れ動くことではなく、発展のなかで解決を図り、技術を人類に最も恩恵をもたらす方向へと自ら導くことにある。

 北京師範大学中国公益研究院の徐暁新院長は、「中国社会はもともとAIフォー・グッドを信じやすい傾向があり、これは中国の文化に根差している。人類が作り出した道具は人類がコントロールできると信じているからで、長年積み重ねてきた発展理念とも結び付いている。私たちは発展の中で問題を解決すべきだと考えており、AIには寛容な発展環境を与えたいと思っている」と述べた。

 AIフォー・グッドはAI自身の発展にとっても極めて重要だ。徐氏は、技術が自ら進化する原動力の一つは「需要」だと分析する。公益領域は商業領域よりも複雑なユーザー環境を提供し、多様な主体間の利益バランスを取ることが求められる。また、ハードウェアや通信環境の保障が十分でない状況でもAIを使えるようにするため、技術提供側が利用のハードルをどう下げるかを考えることも必要となる。

 徐氏はさらに、「AIに見せ、アルゴリズムに見せ、主流社会に見せる――これまで社会から見過ごされてきた人々の存在を可視化することは、AIが長期的にフォー・グッドへと進化していくうえで極めて重要だ。AIが社会問題の解決や公共福祉の改善にどのように貢献しているかを人々が実感できれば、AIに対する受容度が高まり、健全な発展環境が醸成されるだろう」と強調した。

その2 へつづく)


※本稿は、科技日報「AI向善:让算法守护人间烟火」(2025年12月1日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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