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【26-004】AIブームの中、ストレージ産業で需給構造が変化(その2)

羅雲鵬(科技日報記者) 2026年01月14日

フラッシュメモリ大手のサンディスクは2025年11月、NANDフラッシュの契約価格を大幅に引き上げ、値上げ幅は最大50%に達した。これは同社にとって、年内で少なくとも3回目の値上げとなった。サンディスクは4月に全製品で10%、9月初旬にも再び10%の値上げを実施しており、単月で50%という今回の上げ幅は市場の予想を上回るものとなった。

その1 よりつづき)

下流産業に連鎖反応が広がる

 ストレージ価格の上昇が続くことで、下流産業にも連鎖反応が広がっている。具体的には、ストレージモジュールメーカーはストレージチップメーカーの下流に位置し、ストレージチップの調達から設計、パッケージング、テストまでを一貫して行い、標準化されたストレージ部品を最終製品へと仕上げる。産業チェーンの要所として上下流をつなぐ重要な役割を担っているため、上流の価格上昇の影響を真っ先に受ける立場にある。

 深圳佰維存儲科技(BIWIN)と深圳市朗科科技(Netac)の2社も取材に対し、製品価格が市場価格と連動しており、「上流が値上げすれば、下流にも波及する」と回答した。

 こうした状況を受け、多くの大手モジュールメーカーが出荷をいったん停止し、見積価格を再評価する方針を取っている。深圳理工大学算力微電子学院の唐志敏院長は、「需要増加の兆しが見えると、ストレージメーカーが値上げに動くのは当然だ」と述べた。

 値上げの波が押し寄せる中、投資家の視線もストレージ関連銘柄に注がれている。11月以降、ストレージ関連株の半数以上で信用買いが増加しており、そのうち、江波竜電子や徳明利技術、興森科技、兆易創新など6銘柄は、月内の信用取引による純買い入れ額がそれぞれ1億元(1元=約22円)を上回った。

 招商証券によると、2025年第3四半期(7~9月)以降、ストレージ業界は上昇局面が加速する段階に入っており、海外メーカーの収益力が向上し続けている。中国国内でも一部のストレージモジュール企業が急速に黒字転換しており、2025年下半期は利益の拡大がさらに加速する見通しだ。

 また、ストレージ価格の上昇は、データセンターやコンシューマー向け電子製品などのコスト構造について、業界に「冷静な再考」を促している。唐氏は、「ストレージの値上げは、ストレージを多用するサーバーなどのデータセンター関連製品には大きな影響を与えるが、コンシューマー向け電子機器への影響は限定的だ。社会的な観点から見れば、データセンターの建設コスト増加は、少なくとも無計画に立ち上がる建設プロジェクトを抑制する効果がある。関係者は、計画中のスマート計算センターが本当に収益を生むのか、新規のAI計算能力が本当に有効で付加価値のある生産力に転換できるのかをより慎重に見極めるようになるだろう」と語った。

ストレージ業界は再編の可能性も

 ストレージの値上げの波は、半導体業界全体に改めて考える材料を投げかけている。

 唐氏は、「ストレージ価格上昇のより深い理由は、半導体産業内部の矛盾にある。プロセッサ(CPU、GPUなど)とストレージ(DRAM、NANDなど)はITインフラを構成する2つの主要部品であり、製品開発において同等に重要であるにもかかわらず、産業チェーンにおける地位は全く異なる。プロセッサが主導権を握り、ストレージは従属的な立場にある」と指摘した。

 この価値認識の違いが、収益分配における潜在的な駆け引きの焦点となっている。唐氏は、「プロセッサは特徴的な製品、ストレージは標準的な製品と見なされ、一般的にはプロセッサの技術水準が高く、ストレージは低いと思われている。実際には、ストレージ製品もまた最先端の半導体プロセスに基づき設計・製造されており、その難易度は非常に高い」と強調した。

 製品の品薄によってこうした価値認識が変化すれば、ストレージ業界の構造を再編し、利益率が低く過当競争に陥りがちな状況を打破する可能性がある。

 ある業界関係者の分析によると、ストレージ市場は「AIによる再構築」の下で、消費主導から技術主導へと転換していく可能性がある。大規模言語モデルのトレーニングと推論によってメモリ容量の需要が急増するにつれ、HBMやDDR5の不足がストレージ産業チェーン全体へとさらに波及する可能性があるという。

 こうした市場環境の変化は、中国国内のストレージ企業に対し、困難に立ち向かいながらハイエンド分野での突破口を掴むよう迫っている。深圳・華強北地区のストレージ業者である麦旻氏はこの点について、「国内のストレージ企業を信じるべきだ。彼らの技術は絶えず進化しており、海外の大手が独占してきた構図が近く崩れるかもしれない。業界は数社による独占から多様な企業が競い合う時代へと移行するだろう」と楽観視している。

 筆者が整理したところ、中国国内で「ストレージの2強」と称される長鑫科技(CXMT)と長江存儲(YMTC)は、いずれも生産能力を拡大中だ。長鑫科技はDRAMの国産化プロセスを主導し、長江存儲は3D NAND技術のブレイクスルーに注力している。

 唐氏は、「中国では現在、プロセッサ開発とストレージ開発の双方が新たな段階に入っている。仮に、プロセッサ開発部門がストレージ開発部門を支え、革新的なストレージ構造に基づいた全く新しいアーキテクチャの情報処理製品を形成できれば、市場面でも技術面でも非常に価値のある取り組みになるだろう」と語った。


※本稿は、科技日報「AI热潮下,存储产业迎来"超级周期"」(2025年12月8日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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