【26-005】宇宙X線を捉えるために-衛星「天関」の広視野集光イメージング開発記録(その1)
陸成寛(科技日報記者) 2026年01月15日
中国科学院国家空間科学センターからこのほど、衛星「天関」に関するいくつかの話題が届けられた。新しいタイプのX線突発天体を発見し、この神秘的な突発天体の理解に重要な手掛かりを提供したほか、銀河系内の微弱なX線バースト天体の検出にも成功し、恒星質量ブラックホール発見への新たな道を切り開いたという。
広大な宇宙空間において、遠く、暗く、しかも瞬時に消え去る宇宙X線は、人類が宇宙の謎を探るための重要な手掛かりとされる。これらを捉えるには、広く、遠く、しかも鮮明に観測できる「目」が必要であり、衛星「天関」はまさにその役割を担うのが特徴だ。
中国科学院国家天文台研究員で、衛星「天関」の首席科学者を務める袁為民氏は、「これらの成果は、主に『天関』のために特別設計した微小穴ロブスターアイ方式のX線集光イメージング技術によるものだ。この技術は、衛星に極めて広い視野をもたらし、1回の定点観測でおよそ11分の1の天域をカバーできるようになった。さらに検出感度と位置精度も大幅に向上し、性能は国際的な同種装置を上回る」と語った。
「広角レンズ」を磨き上げる
なぜ衛星に「ロブスターアイ」を搭載するのか。その答えはロブスターの目の構造にある。
中国科学院国家天文台研究員の張臣氏によると、ロブスターの目は広い視野と独特の集光機構を持ち、無数の微細な角柱状の管が内側に配置されている。管壁は滑らかで、すべて同一の中心に向いている。光は管壁で反射しながら進み、正確に網膜へと集光される仕組みだ。
この構造に着想を得て、米国の天文学者は「広視野と集光を両立するX線望遠鏡」を構想した。しかし数十年を経ても、この構想はいまだに実現していない。
張氏は、「最大の理由は技術的難易度の高さだ。X線はエネルギーが非常に高く、観測機器を容易に透過してしまうため、可視光のように反射や屈折で集光することが難しい。そのため『天関』に『ロブスターアイ』を持たせる鍵は、ロブスターの眼の構造に似た集光レンズを作ることにあり、その中核がレンズだった」と説明した。
張氏はさらに、「当時、この種のレンズを製造できたのはフランスの1社だけで、価格が高く、品質保証も十分ではなかった。最終的に、独自開発の道を選ぶ決断をした」と振り返る。
ちょうどその頃、以前から調査していた北方夜視技術股份有限公司が協力を申し出た。こうして両者の協業が始まり、レンズの開発が加速した。
張氏は指で指しながら、「開発に着手して初めて、要求精度の高さを思い知った。4センチ四方の面積に100万個近くの角孔を集積し、それぞれの配列方向を精密に設計する必要があった」と振り返る。
初期に試作したレンズは性能が低く、X線イメージングすら困難で、実用には程遠かった。やがて像は得られるようになったものの、分解能は要求に達せず、集光特有の十字形すら判別できなかった。
このような困難に直面しながらも、チームは徹底的に取り組むしかなかった。設計を何度も最適化し、製造プロセスを繰り返し改良した。張氏は、「当時はプレッシャーが大きく、よく眠れなかった。それでも必ず完成させるという一心だった。実験室で夜を明かした日が何日あったか、もはや覚えていない」と語る。
5年近くにわたる積み重ねの末、レンズの分解能は十数分角から3分角へと向上した。信頼できるレンズが完成し、ロブスターアイ望遠鏡のレンズもついに完成した。
(その2 へつづく)
※本稿は、科技日報「为了捕捉宇宙X射线----"天关"卫星大视场聚焦成像技术攻坚纪实」(2025年12月17日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。