【06-002】中国大連理工大学訪日団一行JST訪問
2006年12月20日
(中国総合研究センター 内野秀雄)
中国理工系大学の名門校である大連理工大学欧進萍学長を団長とする訪日団一行が2006年11月27日(月)、科学技術振興機構(JST)を訪問した。欧学長につきそってJSTを訪問したのは大連理工大学学長補佐・寧桂玲教授、国際協力交流処処長・交通研究センター長・趙勝川教授、機械工学院副院長・孫偉教授、外国語学院日本語学部主任・李筱平助教授らだった。
JST側は、永野博理事、馬場錬成中国総合研究センター(CRC)長、寺沢計二国際室長らが出席した。
欧学長は1959年に湖南省で生まれて、今年47歳である。中国工程院院士・副部長級の欧学長が2006年4月27日に中国共産党中央国務院によりハルピン工業大学副学長から大連理工大学学長に抜擢されてからまだ7ヶ月しか経っていない。
教育部直属の大連理工大学は985プロジェクトと211プロジェクトで「中国が21世紀に建設する世界一流レベルの大学」の認定を受けている。理工系学部のみならず、経済、商学、外国語などの文科系学部も併せ持つ大連理工大学に在籍する大学・大学院の全日制学生は約2万9,000人、うち学部生が約1万8,500人、大学院生が約1万200人いるのに対し、専任教師は約1,600人であり、比較的少ないと欧学長が言う。また、大連理工大学は76の博士専攻課程と9つの重点学科及び4つの実験室を持っており、両院院士は10人いると欧学長が紹介する。
欧学長によると、大連理工大学は産学連携に積極的に取組んでおり、国際学術研究交流と協力に力を入れている。また、大連理工大学は中国自然科学基金委員会(NSFC)から130余件の研究プロジェクトに対する助成金をもらっているが、金額ベースでは全国12位である。また、大連理工大学が出している論文の数は、EI論文では全国9位、SCI論文では16、17位であるという。
欧学長は、日本においては、東京大学、早稲田、熊本大学、東工大、東北大学、京都大学などと学術・文化交流などを行っていると説明し、今回のJST訪問をきっかけにJSTとも交流の輪をひろげ、協力関係を築いて行きたいと挨拶した。
続いて、JSTからはDVDによるJSTの概要紹介の後、寺沢国際室長よりJSTとNSFCが共同で実施している国際交流事業やJSTが行っている「新技術の創出に資する研究」「研究成果の企業化支援」「科学技術情報の提供」「科学技術理解増進」などの事業についての紹介が行われるとともに、中国総合研究センター(CRC)馬場センター長よりCRCのミッションと活動内容についての紹介があった。
欧学長は、JSTが科学技術理解増進の一環として開設したサイエンスチャンネルは一般大衆の科学技術に対する関心を高める手段として有効だとして、中国の中央テレビ局にこのようなチャンネルの開設を検討するよう提案したいと述べた。また、JSTと中国のNSFCがたくさんの協力プロジェクトを実施しているのに、大連理工大のプロジェクトが一つも入っていないのが残念だが、今後NSFCに大連理工大の案件を申請して、日中共同案件としての実現を目指したいと語った。
「大連理工大学は中国東北三省における図書交換センターであり、大学のHPは東北三省における情報拠点になっている」と欧学長が紹介し、「JSTには色々な情報源を持っているだろうが、大連理工大学のHPと相互にリンクを貼り付けることを検討して欲しい」と要請し、CRCの中国版HPのリリースを中国の科学技術研究者たちが大いに歓迎するだろうと述べた。
また、欧学長は中国の科学技術への投入計画について次のように述べた。NSFCの10・5計画の5年間の投入は120億元(約1,800億円)だったが、11・5計画の5年間の投入は220億元(約3,300億円)に増えている。科技部は都市化研究をサポートする計画をスタートさせており、今後5年間で14億元(約210億円)を投じて、都市環境、防災、建築、エネルギー、安全など各分野の研究を推進する予定である。
欧学長は中国の大学のランキングに関してこれから公表される情報として、今年大連理工大学は土木分野では全国トップスリーに入り、化学エンジニアリング分野では清華大学と同列の1位になると説明してくれた。
欧学長は最後にJSTとWin-Winの協力関係を推進めていきたいと述べ、次回は是非大連でJSTの皆さんと交流する機会を持ちたいとJST及び中国総合研究センターへの強い期待を込める。
欧 進萍:大連理工大学学長
略歴
1959年湖南省生まれ。1978年湘潭大学水電学部卒業。1983年武漢理工大学構造学修士。1987年ハルピン建築大学構造力学工学博士。1990年ハルピン建築大学教授。1995年1月-1996年1月米国コロンビア大学及び米国国家地震エンジニアリング研究センター客員教授。1998年-2000年ハルピン建築大学土木エンジニアリング学院院長。2000年ハルピン工業大学副学長。2006年4月から大連理工大学学長。国家自然科学基金学科評議チーム長、国家傑出青年科学基金評議委員会委員、国家ハイテク研究発展計画(863計画)海洋資源開発技術課題専門家チームメンバー、構造制御及び監視の国際協会(IASCM)執行理事、理性的な下部組織の構造ヘルスモニタリング国際学会(ISHMII)執行理事、構造制御及び監視の国際協会中国分会主席、中国建築学会副理事長、中国振動エンジニアリング学会副理事長、中国力学学会常務理事、中国土木エンジニアリング学会理事。専門分野:土木エンジニアリング、構造力学。学術論文を160編発表。国家学技術進歩二等賞、省・部学技術進歩一等賞、「国家級中青年突出功労者」称号等受賞。2003年中国工程院院士。