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【11-009】日中機械翻訳技術協力シンポジウム北京にて開催

米山春子(中国総合研究センター フェロー)     2011年10月 5日

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 2011年9月26日(月)・27日(火)、中国科学技術信息研究所(iSTIC)、日本科学技術振興機構(JST)共催、中国科学技術部、日本文部科学省、在中国日本大使館後援の日中機械翻訳協力シンポジウムが北京市で開催された。このシンポジウムは来年日中国交正常化40周年を迎えるにあたり、新たな研究分野で日中共同研究の新時代を切り開くことを目的としている。このシンポジウムは日中の大学、研究所、企業の機械翻訳のトップレベルの専門家を一堂に会した初めての会議である。

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 近年、中国の科学技術は著しく発展し、優秀な学術論文を多く発表している。日中貿易額も科学技術の発展につれて拡大し、いまや中国は日本にとって最大の貿易相手国となっている。一方、日本も今年は第4期科学技術基本計画を作成し、これまでの研究成果を活かしてさらなる進歩が期待されている。現在、日中ともにさらなる技術協力の要望があるにも関わらず、これらの研究成果の大半は母国語で発信され、相手国にリアルタイムで吸収、利用されることはなく、言語の問題は日中交流を妨げる極めて厳しい課題となっている。日中機械翻訳システムが実用化されれば、日中科学技術の発展にとって有意義なことである。

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 会議は中国科学技術部公使参事官阮湘平氏、在中国日本大使館経済部岩本桂一参事官の開会挨拶のつづき、JST理事川上伸昭氏、iSTIC副所長武夷氏がそれぞれ主催側を代表してこのシンポジム開催の意義について説明し、会議参加者に感謝のことばを述べた。その後、日本国立国会図書館館長、元京都大学総長長尾真氏、iSTIC王恵臨教授がそれぞれ基調講演を行った。長尾氏は日本の機械翻訳の第一人者であり、講演では機械翻訳の歴史、日中機械翻訳システム開発の重要性、日中機械翻訳の歩みや展望などについて述べた。長尾氏は、2006年度にスタートした日中機械翻訳は9億円余りをかけ、5年の歳月を経て、日中翻訳では90%、中日翻訳では80%弱の完成度と評価したが、同時に実用化を実現させるには中国の協力が不可欠であることをあらためて強調した。武氏の発言でも同じく日中機械翻訳の重要性、困難性や日中協力の必要性などについて述べた。

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 基調講演に引き続き、日本側は井佐原均豊橋技術科学大学情報メディア基盤センター教授、黒橋禎夫京都大学大学院情報学研究科教授、中川裕志東京大学情報基盤センター教授、梶博行静岡大学情報学部教授、中岩浩巳NTTコミュニケーション科学基礎研究所研究員、内山将夫情報通信研究機構主任研究員、菊池俊一科学技術振興機構主任調査員の7名、中国側では劉群中国科学院計算技術研究所教授、孫楽中国科学院ソフトウェア

 研究所研究員、荀恩東北京言語大学教授、宗成慶中国科学院自動化研究所研究員、胡国平迅飛研究院副院長、張鈞勝中国科学技術信息研究所博士、于浩 研究員、孟瑶 博士富士通研究開発中心有限公司(FRDC)、趙鉄軍ハルピン工業大学教授、朱靖波東北大学教授、陳家俊南京大学博士、史暁東アモイ大学教授の11名がそれぞれ研究発表した。最後に活発な議論を経て、JST川上理事のまとめでシンポジウムの学術発表は終了した。

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 その後、日本側の代表は中国科学技術部を訪れ、科学技術部曹健林副部長をはじめ、科学技術部公使参事官阮湘平、国際合作司処長徐捷氏、調研員姜小平ほかと会談し、日中機械翻訳に関するこれまでの事業について説明した。曹副部長はかって中国科学院副院長の折、科学院の自動化研究所、計算技術研究所などの機械翻訳研究に関わっていて、科学技術部に赴任した後もずっと情報技術を担当していて、情報技術の応用に非常に興味を持っており、日中機械翻訳の研究開発について協力したいという意向を表明した。現在、中国はフランス、ドイツ、イギリス、イタリア、ロシアとも規模の大きい国際共同研究プロジェクトが進行中で、つい最近でもアメリカと1.5億ドルを出し合って、クリーンエネルギー開発を研究テーマとする国際共同研究プロジェクトが起動させている。日本とはまだこのような大きなプロジェクトはないが、中国は新エネルギーや省エネルギー分野で日本との協力を期待しているとのことであった。曹副部長は、来年の日中国交正常化40周年を記念して日中機械翻訳研究協力プロジェクトをぜひ立ち上げたいとのことであった。

 最後に、両国の主催者は「科学技術文献を対象とする日中・中日機械翻訳システム実用化に向けての今後の開発項目及び中日の役割」および今後の協力体制について意見交換を行った。この意見交換を通じ、双方の研究協力意欲が再確認され、プロジェクトの始動に向けて年内のスケジュールを決めた。