【14-003】研究の進展に驚嘆―有馬朗人JST特別顧問が中国科学院蘭州分院を訪問
2014年 9月 8日 米山 春子(中国総合研究交流センター)
元文部大臣の有馬朗人科学技術振興機構(JST)特別顧問・中国総合研究交流センター長が、中国科学院詹文竜副院長の招待で8月25、26日、中国科学院蘭州分院を訪問した。有 馬顧問にとっては3年ぶりの訪問だったが、中国科学院近代物理研究所の研究設備の急速な充実や研究論文の大幅な増加に目を見張っていた。
25日、蘭州分院共産党書記・謝銘氏、科学院寒旱研究所副所長・張小軍氏とともにまず訪れたのは、 蘭州分院の黒河リモート観測試験所。リモート観測試験所主任の李新氏から、近 年の中国のリモート観測研究の進展および国際共同研究の概況について説明を受けた。また同観測試験所が東京大学との連合学生実習プログラムを実施していることも紹介された。有 馬顧問はリモート観測所が日本の学生に実習の場を提供することに深い謝意を表明し、「ぜひJST中国総合研究センターが推進しているさくらサイエンス事業( http://ssp.jst.go.jp/)を利用して、観 測所の若手研究者と大学院生を日本へ派遣する」ことを要請した。
26日は、中国科学院近代物理研究所を視察した。研究所党書記・副所長の趙紅衛氏から重イオン加速器冷却環状保存装置の建設プロセスや核廃棄物の安全、有 効な利用に大いに役立つとされる加速器駆動システム(ADS)の線形加速器実験室の最新研究について、詳細な説明を受けた。有馬氏にとって、同研究所は3年ぶりの訪問。研究設備や研究費の投入状況、さ らに研究者の論文発表の実績に大変驚き「研究所は核物理分野の研究で世界をリードするハブ研究拠点になりつつある」と感想を述べた。
近代物理研究所は1957年に創設され、約半世紀にわたり重イオン物理の基礎研究および重イオンビームの応用研究を一貫して行ってきた。現在約1000名の研究者、職員を擁し、大 学院生は300人ほどが在籍している。近年、原子核質量の測定や重イオンビームのがん治療研究などの分野で、多数の世界に誇る研究業績を挙げている。
有馬顧問は1981年の初訪問以来、30数年間に10数回も研究所を訪ね、多くの研究者と共同研究を続けてきた。かつての研究所の共同研究者は、今では中国全土に拡散し、多 くの研究所や大学の研究リーダーになっている。いまも有馬顧問と共著論文を発表し続けている研究者も少なくない。
近代物理研究所の講堂で、有馬氏が「核変換に対する期待」と題した講演を行った。再生可能なエネルギーの利用率の向上や安全な核技術の研究開発の重要性などについては、多くの若い研究者の関心を集め、講 演後も質問が絶えなかった。「来年、またほかの観測試験所の視察をぜひ」との研究所関係者の声に送られ、蘭州を後にした。