第61号:電子情報技術
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大口径光ファイバレーザ装置の新たな展開

2011年10月 7日

楼 祺洪

楼 祺洪(Lou Qihong):
中国科学院上海光学精密機械研究所研究員、博士課程指導教員

1942年7月生まれ。1964年、中国科技大学卒(量子・電子工学専攻)。卒業後、現在に至るまで上海光学精密機械研究所に勤務。1980年~82年、米国カリフォルニア大学客員研究員。1990年~91年、日本工業研究所客員教授。主に、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、レーザと物質との相互作用について研究。現在は主に、光ファイバレーザおよびセラミックレーザを研究。7事業で自然科学賞および科学技術進歩賞を獲得。著書は「パルス放電による気体レーザ装置」、「高出力の光ファイバレーザ及びその実用」。発表論文300本以上、SCIに100本以上収録。1988年、3大索引(SCI、EI、ISTP)に論文が多数掲載された中国人研究者の上位10位入り。現在は、「中国レーザ」、「レーザ技術」、「強レーザ及び粒子線」、「High Power Laser Science and Engineering」等の雑誌の編集委員を務める。上海市欧美同学会の常務理事を長く務める。

共著者:周 軍、張 海波、袁 志軍

1. 序

 光ファイバにおける光の全反射・伝送現象は早くから知られているが、初期の光ファイバは減衰が大きかった(約1000dB/km)ため、医療機器の現像用部品を除き、長距離環境下での使用は難しかった。1970年代になって光ファイバの減衰率は20dB/kmまで低減され、現在製造中の通信用光ファイバでは減衰は0.1dB/km で、波長も1.55μmまで引き下げられた。この進歩は、光ファイバ通信に革命的な変化をもたらした。スウェーデン王立科学院は2009年10月6日、同年のノーベル物理学賞をチャールズ・カオ(高錕)、Wielaard BoireおよびGeorge Smithに授与することを決定した。カオは「ファイバにおける光の伝送および光学通信面への利用」において革新的な業績を収め、この成果により遂には光通信システムが発明され、現在のインターネットの発達に道を開いた。減衰の少ない光ファイバの登場により、人々は光ファイバ素材に直接レアアースイオンをドーピングした上でのレーザの出力を望むようになった。1980年代、シングルモード・レーザ・ダイオードをポンプ源とし、シングルモード・光ファイバにおいて数10mWのレーザ出力を獲得し、中でも作動波長が1550nmのErドープ光ファイバ増幅器が光通信で非常に有用な信号増幅コンポーネントとなった。シングルモード・光ファイバのコア径は非常に小さく、一般に10μm以下であることから、さらに大きな出力で光ファイバのコアに注入しようとした際に技術的問題に直面したため、1988年にダブルクラッド・光ファイバが登場し、微細なコア径を維持しつつ、ポンプ光を数百nm規模のインナークラッドに送り込めるようになった。この技術的ブレイクスルーによって、10数年のうちに光ファイバレーザの出力は急速に向上し、現在では連続出力を行う光ファイバレーザの出力はすでに1000ワット以上に達している。光ファイバのコアが耐容可能な出力はコア径と関係するため、光ファイバレーザの出力をさらに向上させる方法としては(1)超大規模モデルのダブルクラッド光ファイバを設計して光ファイバのミドル・ローモードのコア径を拡大する(2)光ファイバのコア径を拡大し、さまざまな方法を併用してビーム質量を変更する――の2種類がある。本稿では、この2種類の方法を紹介し、実験結果の一部を示す。

2. 超大規模モデルのダブルクラッド・光ファイバの設計

 既存のダブルクラッド・光ファイバはコア径が小さい時しかシングルモード出力を実現できなかったため、コアサイズもこれら光ファイバレーザのシングルモード出力の制約であった。そこでコア径が大きくてもシングルモード出力を実現できる光ファイバを設計することはできないだろうかと考えた研究者らは、この魅力的な構想を実現するための設計方法として、以下の4種類を提案した。

2.1 ヘリカルコア光ファイバ

 ヘリカルコア光ファイバの原理は、光ファイバのコイルや曲げを利用してモード制御を行う原理と類似し、違いはヘリカルコア光ファイバの場合は光ファイバを引き延ばす際にコアを人為的にらせん状に引っ張る点にある。つまり、プリフォームを引き延ばして光ファイバを作ると同時に、このプリフォームの中心軸に沿って定速でプリフォームを回転させるのである。完成したヘリカルコアのピッチはこの回転速度により決まる。2003年にSohらは、ヘリカルコア光ファイバのモード減衰について初歩的な理論シミュレーション計算を行い、2005年にJiangらはヘリカルコア・ダブルクラッド・光ファイバ理論をさらに進歩させた。2003年にP.Wangらは、ほかに先駆けてヘリカルコア・ダブルクラッド・光ファイバを利用してシングルモード出力を実現した。P.Wangらが作成したヘリカルコア・ダブルクラッド・光ファイバのコア径は26μmで、データ孔径(NA)は0.14(作動波長が1047nm時の正規化周波数はv=11)、コアピッチは5.2mm、偏心率は130μmで、インナークラッド層の直径は400μm、光ファイバ長は3mであった。ポンプ出力が2.2Wのとき、光ファイバレーザの出力は350mWで、ビーム質量M2因子は1.1を下回った。2006年には、この方法を利用して60.4Wのシングルモード出力を実現した。

2.2 多層クラッド光ファイバ

 光ファイバ通信システム中の光ファイバ伝送効率を向上させるため、V.Rastogiらは2001年、特殊構造を持つ一種の新型光ファイバ「多層クラッド光ファイバ(SCF)」を発表した。SCFはコアとクラッドからなり、コアは均一な屈折率r1を有し、クラッドは周期分布的な角度幅2θ1を有する高い屈折率エリアn1と、媒質と角度幅が2θ2の低い屈折率エリアn2の媒質からなる。各エリアにおける周期のデューティ比はΛ=2θ1+2θ2、円周のデューティ比はγ=2θ2/Λである。加工が難しいため、当該構造の実用には難度を伴う。

2.3 特殊コアドープ光ファイバ

 大規模モデルの光ファイバは、モードによりコア内の分布が異なる。コアの径方向でドーパント・エリアおよびドーパント・イオンの濃度分布を制御し、基本横モードで比較的大きなゲインを得られるようにすれば、他の高次モードのゲインが非常に小さくなり、光ファイバ内で振動を生じるのは主に基本横モードとなる。1998年にH.L.Offerhausらが初めてこの方法を提起し、コアのドープ直径が約40μmのとき、得られたビーム質量M2因子は2.0のレーザ出力であった。1999年にJ.M Sousaらはレアアースイオン・ドープの空間分布の最適化設計を行い、実験で3本の光ファイバを製作したが、これら光ファイバにはすべて同一のステップ屈折率を採用して設計し、コア開口数は0.2、インナークラッド直径は125μmで、コアにはErをドープし、コア径はそれぞれ5μm、12μm、23μmとした。コア径が12μmと23μmの2本の光ファイバはいずれもマルチモード・光ファイバであったが、実験結果で得られたのはいずれもシングルモード出力で、出力ビーム質量のM2因子はそれぞれ1.1と1.2であった。

2.4 ゲインガイド・光ファイバ

 既存の光ファイバコアの屈折率はクラッドよりも高いため、ビームが両者の屈折率差という制約のもとで伝送されることから、インデックスガイド・光ファイバと呼ばれる。2003年にA.E.Siegmanがゲインガイド(GG)・光ファイバの概念を提起し、モードの違いにより光ファイバ内で有するゲインと損失が異なる特性を利用し、モードフィルタを得る目的を果たした。2006年に彼らは新型の光ファイバを発表した。この光ファイバは、屈折率およびゲインによるガイドの原理を利用したもので、既存の光ファイバとの最大の違いは、コアの屈折率がクラッドより低いことで大口径コアにおけるシングルモード出力を実現できる点にある。クラッドから見ればコアの屈折率は負であるため、負の屈折率を持つ光ファイバとも称される。この光ファイバの正規化周波数vは複素数であり、この光線ではゲインガイドを採用してモード伝送を実現する。適切なパラメータを採用すればLP01のシングルモード振動を実現できる。例えば、設計された光ファイバクラッドの屈折率は1.5734、コア径は100μmで、Ndをドープしたところ屈折率は1.5689で、クラッドに比べて0.35%低く、光ファイバ長は10cmの場合には、0.75mJの1052nmレーザ出力が得られ、ビーム質量のM2因子は≦2となった。

3. 大口径光ファイバレーザ装置のモード制御技術

 大規模マルチモード光ファイバレーザ装置における高次モードの振動を可能な限り抑制するために得られる必要な基本横モード出力について、各国の研究者はさまざまなモード制御方法を採用している。これらの方法は大きく2種類に分類できる。一つ目は、すでに引き延ばしが完了している光ファイバに対してモード制御を行う方法で、外部モード制御技術と呼ばれ、もう一つは光ファイバの内部構造について設計を行った後に引き延ばしを行うため、完成した光ファイバは通常の光ファイバよりも大きいコアサイズを有すると同時に、シングルモード出力を保証される。これら2つの技術の中で、多くの技術は互換性があり、2種類または複数の技術を同時に採用することで最良の出力を得ることができる。外部モード制御技術は、既存の大規模マルチモード光ファイバレーザ装置についてモード制御を行い、高次モードの筐体内での振動を抑制することで、基本横モードのレーザ出力の獲得を期待する。特殊筐体構造や光ファイバの巻き付け・曲げおよび光ファイバの双円錐等を採用する方法でモード制御を行う方法などはいずれもこの種に属する。

3.1 特殊筐体構造法

 大規模マルチモード光ファイバの外側に光学部品を付け加えてレーザ共振筐体を構成し、特殊に設計された外部筐体構造を用いて、その中の高次モードで高位減衰を生じさせ、基本モードに筐体内でのみ振動を生じさせることにより、最終的にシングルモード出力の目的を実現する。1996年にU.Griebnerらは特殊な外部筐体を採用し、長さ13mmのマルチモード光ファイバ1本を用い、マルチモードNd3+ドープ・光ファイバレーザ装置の近回折限界における出力を実現した。実験で採用されたマルチモードNd3+ドープ・光ファイバのコア径は約100μm、開口数は0.44、作動波長1053nmでは1000回を上回る横モードの振動を支持できる。908nmレーザ・ダイオード・ポンプ光はピッグテイルから出力された後にコリメータを経てフォーカスされ、光ファイバに直接注入される。ポンプ端のダイクロイックミラーはレーザ波長1053nmで強く反射し、ポンプ光808nmを高く透過するが、透過率は93%を上回り、出力端のダイクロイックミラーの1053nmレーザに対する反射率は96.8%で、ポンプ端の光ファイバ端面とダイクロイックミラーM1が緊密に接する場合も、光ファイバ出力端面とダイクロイックミラーM2の間には一定の距離がある。さまざまなレーザモードに対し、光ファイバ出力端から出力された後のフレネル(Fresnel)回折損失γは異なり、その大きさは光ファイバ出力端面とダイクロイックミラーM2の間の距離と相関性がある。距離が150μmの時は、基本横モードのFresnel回折損失が約0.4%である一方、高次モードのFresnel回折損失はいずれも1.0%を上回ったため、高次モードの効果的な識別が実現できる。

 中国科学院上海光学精密機械研究所は、凹面外筐体技術を採用することにより、コアの太いマルチモード・ダブルクラッド光ファイバ中で高ビーム質量のレーザ出力を得た。比較的太いコアを有するマルチモード・ダブルクラッド光ファイバに対し、そのレーザモードは非常に劣り、シングルモード出力とは異なった。光導波管理論に基づけば、光ファイバにおける低次モードおよび高次モードの差は発散角の大きさにあり、低次モードの発散角は、光が自由空間で伝播する際の光ファイバのコア径に決定される回折角によるため、伝播方向を制限する共振筐体を採用することで、モードの選択により、光ファイバレーザをシングルモードにすることができる。このために、平面のダイクロイック片を中心にコーティングを施してある凹面鏡に変更し、コーティング層がレーザを強く反射し、ポンプ光を高く透過するようにする。凹面鏡に照射されたレーザは、中心の低次モードの部分が筐体内に反射され、振動を生じさえすれば、ビーム質量向上の作用を果たすことができる。

 実験装置は図6を参照。ダイオード・レーザ装置の発する平行光束は、空間フィルタを経て、非球面レンズから光ファイバに進入してポンプ運動を行う。中心をコーティングした凹面鏡は筐体に充当してフィードバックを提供すると同時に、モード制限の役割を果たす。出力端の光ファイバ端面はもう一つの筐体鏡に充当し、4%のFresnel反射を提供する。逆方向のポンプ構造を採用して、中国製の20mダブルクラッド光ファイバ利用して実験を行ったところ、さまざまなコーティング・エリアの凹面外部筐体に対応し、さまざまなビーム質量におけるレーザ出力を実現し、ビーム質量因子は2.56から1.3に改善された。使用された光ファイバのパラメータはD型で、インナークラッドのサイズは650/600μmで開口数は0.37、コア径は43μmで開口数は0.08であった。

3.2 シード光注入方法

 シード光源から出力されたレーザが基本モードまたはシングルモード直線偏光である場合は、マルチモードNd3+ドープ光ファイバに直接注入して増幅させ、最終的にシステム全体で近回折限界のレーザ出力を実現できる。1999年、I. Zawischaらは主発振器出力増幅器(MOPA)技術を利用し、マルチモードNd3+ドープ光ファイバを採用してシングルモード・シード光を増幅させ、基本横モード・レーザ出力を得た。シングルモード・シード光の作動波長は1064nmで、2波長波長板を経てシングルモード偏光に変換され、さらにコリメータおよび集束系を経て光ファイバに注入された。光ファイバのコア径は11μmで、開口数は0.16、作動波長1064nmのν≈5であった。また、インナークラッド直径は400μm、開口数は0.38、光ファイバ長は30mであった。最終的に出力されたレーザのビーム質量因子は約1.1であった。これ以外にも、他の研究チームがこの方法を採用してシングルモード・横モード出力を実現したとの報道もなされている。これら技術は光ファイバ増幅器中での使用に限られるものの、非常に効果的なモード選択技術の一つでもある。現在では、多極の増幅技術を採用することで1万ワット以上の出力を得ることができるうえ、良好なビーム質量を維持することができる。

3.3 光ファイバ巻き付け法

 ダブルクラッド光ファイバにおいては、コアおよびインナークラッド界面で全反射条件を満たす光だけがコア内部で伝送される。大規模マルチモード光ファイバにおいては、光ファイバ中に基本横モードおよびその他一部の高次モードが存在する場合、それらの伝送ルートはそれぞれ異なる。さまざまな条件下で、高次モードは巻き付けにより敏感である。光ファイバを一定の大きさに巻き付けた際、もともとの導波光の中でモードの比較的高い部分は、コアおよびインナークラッド界面で全反射条件を満たさなくなり、クラッドからの逸脱により、高次モードの損失が基本横モードよりずっと高くなる。図8で直感的に見られるように、現行の巻き付け程度の下では、高次モードの一部のエネルギーがクラッドから逸脱するものの、基本横モードは基本的に影響を受けない。2000年にJ. P. Koplowらがマルチモード光ファイバ増幅器を採用し、光ファイバの巻き付け法を利用してシングルモード出力を得た。彼らは光ファイバをさまざまな直径の円柱体に巻き付けることで分布式空間フィルタの効果を生じさせ、適切な円柱体半径を選択することでその他の高次モードを抑制し、光ファイバレーザ装置の基本横モード運行を維持することができた。D. Marcuseの曲げ損失理論に基づき、一定の基本モードLP 01損失(γ01)について、彼らが相応する高次モードLP11のモード損失係数を計算した結果、LP01モードの非常に小さな曲げ損失を実現するには、高次モードの損失を向上することで実現することができ、その際の光ファイバのコア径は50~100μmの範囲(対応するν値は12~14)に達しても良いことがわかった。これに対応する曲げ半径は1.7~3.7cmである。

 実験で採用したダブルクラッド光ファイバ長は6m、コア径は25μm、開口数は0.10(作動波長1064nm時のν≈7.4)で、インナークラッドは六角形で外径は200μm、開口数は0.47であった。ポンプ源は作動波長974nmの半導体レーザ装置で、シード源は1064nmで、シングル・縦モードNd:YAGレーザ装置である。巻き付け直径が1.58cmの時の出力ビーム質量M2因子は1.09±0.09であった。この方法は光ファイバの連続増幅によるシングルモード出力の実現に用いられるだけでなく、パルス光ファイバ増幅器にも同様に適用された。

 中国科学院上海光学精密機械研究所は、巻き付け法によるモード制御技術について系統的な実験および理論研究を行った。通常の端面ポンプの直線筐体構造を採用し、武漢郵電科学院より提供されたYbドープ・ダブルクラッド光ファイバをレーザ媒質とした。光ファイバのパラメータは、D型インナークラッドサイズは650/600μm、開口数は0.48で、Ybドープ・コア径は43μmで開口数は0.08(作動波長1090nm付近のνは約9.9)、光ファイバ長は約8mであった。その他の条件を変えずに維持した条件下で、光ファイバを巻き付ける円柱体の半径が165mmおよび52 mmの場合を相次ぎ実験した後、レーザ機器の出力性能について測定を行った。その結果、ポンプ出力が380Wで巻き付け半径が165mmおよび52mmの時の光ファイバレーザ装置の出力は217Wおよび160Wであった。対応する光ファイバレーザ装置の最大出力効率は約26%減少したとは言え、ビーム質量因子の向上により、ビーム輝度は当初の3.41倍になった。

3.4 光ファイバ双円錐法

 光ファイバの双円錐部分をモードフィルタ(MF)と見なすことで、モードの識別を実現する。このMF理論はZ. Haasらが提起したもので、1本のマルチモード光ファイバの両端においてコアに直接に1本のシングルモード光ファイバをはんだ付けする。その目的は、マルチモード光ファイバの帯域幅を向上させることで、光波がこのはんだ付けされた光ファイバで伝送される際に、シングルモード光ファイバをひとつの光学的ピンホールと見なすことにある。コアの直径が異なることから、このモードフィルタは光ファイバの連結点で高い減衰を生じることができる。後に、研究者たちはこのMF機能は既存の光ファイバ双円錐技術で実現できることを見いだした。つまり、1本の光ファイバのコアサイズを小さくすることで、光ファイバの双円錐部分にMFを導きいれたのである。光ファイバの双円錐プロセスにおいて、光ファイバのコア径はクラッドと同様に比率の縮小に伴い小さくなるが、光ファイバ双円錐がどの程度まで小さくなるかは、双円錐エリアではシングルモード伝送を支持することだけから決まるため、光ファイバの双円錐部分も一つの光学的ピンホールと見なすことができる。このピンホールの大きさはちょうどシングルモード伝送が可能な大きさで、すでに存在する高次モードではピンホールを通過できないため、最終的に光ファイバレーザ筐体ではシングルモード振動のみが出力可能となる。

 1999年、英国サザンプトン大学の研究者が初めて光ファイバ双円錐を採用し、大規模マルチモード光ファイバレーザ装置による疑似シングルモード出力を実現した。彼らは光ファイバレーザ装置の出力端を引き延ばして双円錐エリアを形成した。双円錐エリア長は3cmで直径の最小ポイントは70μmとした。実験に用いられた光ファイバのコア径は15μm、開口数は0.15(作動波長1080nmのν≈6.7)、インナークラッド直径は200μm、長さは10mであった。実験では双円錐の前後で光ファイバレーザ装置の出力効率とビーム質量をそれぞれ測定した。双円錐の前の光ファイバレーザ装置の傾斜度は85%、ビーム質量M2因子は2.6、最大出力は11Wであった。また、双円錐の後ろの光ファイバレーザ装置の傾斜度は67%、ビーム質量M2因子は1.4、最大出力は9Wであった。双円錐の後ろの最大出力損失は20%でその輝度の増加は双円錐の前の3.5倍であった。

 中国科学院上海光学精密機械研究所は双円錐法のモード制御技術に関し、武漢郵電科学院の提供したYbドープ・ダブルクラッド光ファイバを用いて双円錐法のモード制御技術の実験・研究を実施した。光ファイバのインナークラッドはD型の650/600μm、開口数は0.48とし、Ybドープ・コアの直径は43μm、開口数は0.08(作動波長1090nm付近のνは約9.9)、光ファイバ長は約12mであった。実験では、光ファイバレーザ装置の双円錐の前と後ろにおけるビーム質量因子をそれぞれ測定したところ、双円錐の前後のビーム質量M2因子は、それぞれ3.06±0.10および1.13±0.01であった。ビームウエストに対応する位置は基本的に変化が生じず、双円錐の前と比べ、双円錐の後方のビームウエスト半径にやや減少が見られ、その発散角は大幅に減少した。実験では、同時に光ファイバレーザ装置の双円錐の前後における出力を測定したところ、最大ポンプ出力が119.1Wの時の対応する出力はそれぞれ77.9Wおよび56.4Wであった。ビーム質量が大幅に増加したため、双円錐の後ろの最大出力は約30.6%減少したものの、そのビーム輝度は双円錐の前の約5.26倍であった。

4. 結論

 光ファイバレーザの1本当たりの連続出力は、すでに1万Wを上回っている。超大規模光ファイバの最適化設計を通じ、光ファイバの出力をより向上できるだけでなく、同時に光ファイバレーザの比較的良好なビーム質量を保証することができる。また、モード制御技術を通じ、大規模光ファイバレーザ装置の高次モードにおける振動を効果的に抑制できるため、期待される基本モード出力を得ることができる。実験結果に基づけば、光ファイバの効率のさらなる向上は実現可能である。