第99号
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厦門大学 産学官連携の現状と未来

譚紹浜、林勝蘭(厦門大学)  2014年12月25日 

 人材育成、科学技術研究と社会貢献は、大学の基本的な3つの大きな役割である。社会貢献とは、産学官連携による質の高い人材を提供すること、高水準の科学技術を維持することで、経済と社会の発展に寄与することである。同時に、大学としても、産学官連携の中で国や地方の発展に深く関わり、研究機関や企業の広範な協力を得ることで大学自身が急速な発展をすることができる。さらにハイレベルで創造的な人材を育成し科学技術研究を高めていくことができるのである。近年厦門大学は、人材や学術、また技術革新に関する優位性を発揮しており、国や地方の発展に重要な役割を果たすと同時に、産学官連携の形を模索し続け、イノベーションを促し教育レベルを高め続けている。

一、産学官の連携を深める

 社会貢献は大学の重要な役割である。厦門大学は創立時より、「学術研究、人材育成、社会のリーダーシップをとることを目的にする」ことを明確にしており、「『福建省の天然資源を用いて、産業の振興を実現し、国際貿易を発展させる』べきである」としている。

 ここ数年来、大学はトップ層を強化し、計画的、組織的に社会貢献を展開している。例えば、地域経済の発展に関し研究と分析を行い、「厦門大学による海峡西岸の経済特区に関する行動計画」「厦門大学による厦門市産業発展のための行動計画」「厦門大学による漳州市産業発展のための行動計画」などを策定し、全校の教師や学生の活動を後押ししている。現在、大学はすでに多くの省内の都市と戦略的協力関係を築きあげるとともに、数社の国有大企業と航空、バイオメディカル、電子情報、エネルギーなどの領域で戦略的に協力を進めている。このように、いくつものプロジェクトを促進することによって人材を育成し、最先端の科学技術を推進することで、絶えず大学の自主的な技術開発力を高めている。

二、学科を見直し、産業の発展に見合う人材のニーズに応える

 2008年からの世界的な金融危機は、各国に広範な影響力を与えただけでなく、新たな産業により経済を発展させることへの転換を促した。中国政府は新エネルギー、新素材、バイオメディカル等、10の新興産業の戦略を発表した。

 そこで、厦門大学はこれらのニーズに応えるために科学技術推進のための研究機関や学部を設置し、産業の発展に必要な人材を育成している。また、アルコールエーテルエステル化学の国立工学研究所、細胞ストレス生物学国家重要実験室、分子ワクチンおよび分子診断の国家重要実験室、天然資源による薬品の国家及び地方の共同工学研究室などの科学技術研究施設と協力して、「エネルギー材料化学」、「医療用生物学的製剤」、「海洋生物資源の開発と利用」などの研究を行う「2011共同イノベーションセンター」を創設した。学部に関しては、新たに公衆衛生学部、薬学部、エネルギー学部、電子科学学部などを設置した。人材育成に関しては、「エネルギー科学コース」「医療研究技術」など応用科目を増設し、その結果、工科などの応用系の人材は学生のうち30%以上を占めることとなった。このように大学が新入生を募集する指標は、社会のニーズに重きを置いたものとなっている。学校が産学官連携のための人材育成を推進し企業と連携することで、学生は実習を通じ早期に産業界の最前線と実際のニーズに触れることが出来る。

三、新たな施設を建設し、科学技術のサポートを強化する。

 大学の科学技術関連の新たな施設は、国や地方の科学技術の発展の重要な役割を担い、研究部門や学部の創設などによって、国及び地方の地域経済発展のために強力なサポートを行っている。

 厦門大学は国家戦略に合わせ、化学、生命科学、海洋科学などの学部で、国家重点実験室、国立工学研究所等の16の高度な国家レベルの施設を保有しており、科学技術の革新基盤を構築した。同時に、海洋、エコロジー、環境、新エネルギー、新素材、情報科学分野においては、福建省と厦門市の重点実験室やセンター等、省や市レベルの施設が68あり、省や市における革新的な基盤も構築している。また「2011共同イノベーションセンター」内に現在建設中の施設が8つある。

 これらの施設を建設することで、大学は最先端の研究や重要な研究プロジェクトを展開することができ、国や地方の技術革新力を強化している。また、企業や研究機関と連携して、様々な研究センターや共同研究室等を50以上建設した。産学の協力を通じて大学は、企業が必要とした技術を提供するとともに、市場のニーズの変化を捉え研究の方向性を検証し、研究開発を促進させている。

四、共同研究により科学技術を促進する。

 産学官の共同研究は、大学に新たな開発能力や成長をもたらし、社会や経済の発展の重要な鍵となっている。厦門大学は、「2011計画」の実施を契機として積極的に産学官の共同研究を推進し、科学技術を現実の生産力に結びつけ、産業再編を促してきた。

 全国で「感染症診断試薬産業の技術革新連盟」を主宰している国立感染症診断薬及びワクチン工学技術研究センターは、福建省のワクチン生産研究拠点である「厦門養生堂産研施設」を建設して、厦門のバイオメディカル産業の発展を推進している。養生堂万泰バイオメディカル株式会社と共同開発したE型肝炎ワクチンは、2011年12月に国立薬物証明書と製造番号を取得し、知的財産権を保有する世界初のE型肝炎の予防ワクチンとなった。このワクチンは、厦門で2012年に発売された。厦門万泰海洋バイオテクノロジー株式会社等と共同開発した子宮頸がんワクチンは、臨床試験を経た国内初の、また世界で3番目の子宮頸がんワクチンである。企業のプロジェクトと緊密に協力することで研究成果が迅速に市場にもたらされ、市民への奉仕を実現している。

 厦門大学「海西工業技術研究院通信工学技術センター」は、多数の企業を巻き込み、協力して革新的な実験室を建設している。すなわち、研究成果を実用化するため、製品のコアとなる技術を企業にフィードバックし、地方の通信産業の発展に貢献しているのである。センターは「実験室」と「通信センター」で構成されており、「実験室」の目的は、学部や施設の設置と人材育成及び、知識の刷新にある。一方、「通信センター」は「実験室」の学部と人材によるサポートの下、企業のニーズをくみ取り研究開発を行うことで、常に企業の求める製品や技術に応え続けている。センターはこれまでの経験を通じて、「理論の探求-技術開発-実験-製品の生産」この流れが技術革新の鍵となると分析している。

五、科学研究の組織と管理体制を改革し、産学官共同研究の新たな形を模索する。

 産学官の共同研究の場合、大学の研究組織の管理が大きな課題となっている。従来の自由な研究活動から産業界に向く研究へシフトすることは非常に困難であるが、避けることの出来ない課題である。近年、厦門大学もまた同様の問題に直面し改革を行っている。

 大学では研究課題に応じて学部の壁を飛び越えて研究が成立しており、地域研究と研究テーマは10の学部にまたがり、教師も異なる学部から集まっている。また大学はチームで課題に取り組む「課題のチーム制」を推進し、活動の基本としている。資源の割り当てや担当する教師の審査はチーム単位で行われ、教師が独自に研究を展開するのを抑制している。科学技術の研究は、個人的、閉鎖的で分割して行う方式から徐々に流動的、開放的で協調的な路線へと推移し、産業のニーズに応えようとしているのである。大学はまた、関連する課題として、研究施設の管理を強化している。なぜなら研究施設は自らの申請が、研究開発費の分配を大きく左右するのである。毎年、個々の実験室は経費をつかって研究活動を行っている。大学は、「実態の管理をし、定期的に審査をし、不合格とみなされる実験室を淘汰する」制度を作り、実績が評価されると継続して新たに資金が投入される。管理強化、施設増強、また自助努力に努めることで、産業へのサポート力を高めているのである。

六、未来思考

 近年の社会貢献及び産学官の協力モデルの中で、厦門大学は産学官連携において一定の成功と成果を示している。しかし、地域経済及び社会の急速な成長に対応するためには、依然改善の余地がある。例えば、産業に必要な人材の提供はまだ完璧ではない。又、地域産業との結びつきもまだ不十分で、地域産業発展の成果とプロジェクトもそれほど多くない点等があげられる。そこで、中国の大学教育がよりオープンになり、大学の人材育成や科学技術研究が経済成長のニーズとさらに緊密な関係になれば、大学が国家経済発展を支える役割を担うことになり、産学官連携が著しい効果を発揮するであろう。

 第一に、クリエイティブな人材を育成する事を基本とする。大学は産学官の連携を強めるために教育モデルを刷新し、教育改革を推進する。大学の人材育成は産業界を指向しており、企業と大学が「双方向性」の関係を築き、グループ制を構築することで、実践的な教育を強化できる。このような形で人材の交流を図ることで、学生の創造力や実践力が増し、学生が就職する際にもその力を発揮できる。

 第二に、教師を動かす事で主体性及び創造性のある良好な雰囲気を創出する。大学が適切に人材を評価することにより、産学官の協力体制が維持促進される。大学は人材の評価機構を改善し、産学官連携の成果をメインとした合理的な産学官協力評価体系を打ち立てた。大学の各学部の教師は大学の研究室から飛び出て自己の研究成果を市場で試すよう、資源の有効活用に取り組まなければいけない。

 第三に、持続可能で健全に発展できる長期的なメカニズムを打ち立てる。産学官連携は効果的で柔軟なサポートを必要としているため、大学は共同研究の創造性を推し進め、大学間や学部間での資源の共有と協力を実現する必要がある。地域産業発展に関する校内の研究体系を打ち立てるために厦門大学は、厦門大学産業技術研究院や厦門大学国家大学テクノロジーパークを建設し、地域の産業技術研究開発センターとして地域産業発展の重要なサポート施設となっている。仕組みを改善し、施設を建て、情報共有ができるようにすることで教師や生徒に産学官連携のための効果的なサポートを提供することができる。