人体免疫系のメカニズムは複雑かつ精密で、限りなく神秘的だ。中国科学院の科学者による最新の研究は、人体の免疫系内のカルシウムイオンが、T細胞の病原体駆除の一助となることを初めて突き止めた。国際的な科学雑誌「ネイチャー」は3日、ウェブサイト上で関連の研究論文を掲載した。新華社が伝えた。
同研究の責任者、中国科学院生物化学・細胞生物学研究所の研究員の許シンキ氏(シン=深のさんずいを王に、キ=王+奇)は、「T細胞は人体免疫系の重要な機能細胞で、腫瘍、エイズ、免疫欠損症、自己免疫疾患など各種疾病と直接関連している。エイズウイルスは、T細胞の感染により免疫系を損ね発病に至る」と説明した。
カルシウムイオンは、人体が必要とする金属イオンで、骨と歯を形成するほか、細胞内で非常に重要な「信号の使者」としての役割を果たす。許氏はバイオ化学、バイオ物理、免疫学などさまざまな技術手段による研究を通じ、次のことに気づいた。T細胞が活性化されると、細胞外のカルシウムイオンがカルシウムイオン通路を通り細胞内に入り、細胞内のカルシウムイオンの濃度が数妙内に10倍に上昇し、これが数時間にわたり続く。
さらなる研究により、このカルシウムイオンはTCR周辺の脂質分子と直接結びつき、その陰電荷を中和し、脂質分子によるTCR活性化の妨害を取り払い、TCRの活性化を促すことが明らかになった。これにより弱い抗原刺激信号が大きくなるため、T細胞が完全に効果を発揮できるようになる。このメカニズムにより、T細胞の抗原に対する敏感度が高まる。