2013年05月13日-05月17日
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リモートセンシング技術 地球を見渡す「千里眼」

2013年05月13日

 第35回国際環境リモートセンシング会議(ISRSE) がこのほど北京で開催され、世界56カ国・地域から専門家1000人あまりが参加した。50年の歴史を持つ同国際会議が中国で開催されるのは今回が初めて。

 中国科学院リモートセンシング・デジタル地球研究所(以下、地球所)の郭華東所長は、「ISRSEが北京で開催されたことは、中国のリモートセンシング技術とその応用・発展が世界から幅広く認可されたことを示している」と語る。人民日報が伝えた。

 リモートセンシング技術は、目標が反射・放射・散乱する可視光、赤外線、マイクロ波などの電磁波を遠距離から感知することにより、目標を観測・識別する技術で、1960年代に始まった。視力には限度があるが、リモートセンシング技術の登場によって、人類は無限に地球を見渡すことのできる「千里眼」を手に入れた。

 中国のリモートセンシング技術はここ数年で急速に発展し、自然災害のモニタリング、環境モニタリング、世界遺産保護、持続可能な発展など幅広い分野で応用されている。

 ▽被災地の情報を真っ先に取得

 郭所長は「高解像度のリモートセンシング観測技術は、被災地のデータを精確に取得する上で最も重要な手段の1つとなる。地球所では、地震後に得られた被災地のリモートセンシングデータを、救援を行う国家関連部門や被災地政府と共有し、さらにネット上でも衛星データを無料公開しており、被災地の状況把握や救援指揮の的確な判断に向け、重要な役割を発揮している」と語る。

 ▽PM2.5の大規模モニタリング

 地球所の陳良富研究員は「深刻なスモッグの発生メカニズムを科学的に認識できなければ、判断ミスを生みやすい。もしスモッグの原因が全て汚染物質の排出だと考えるならば、間違った対応をすることになる。科学に基づく判断を行うためには、地上からの観測手段だけでは足りない。衛星リモートセンシング観測で補充することにより、全面的・客観的な判断を行うことができる。中国は今後もリモートセンシング技術の応用を強化し、中国、米国、欧州の衛星データを総合的に分析し、より全面的かつ正確に大気汚染状況を把握していく」と語る。

 ▽世界遺産の保護にも活躍

 衛星ベース、航空機ベースのほか、地上ベースのリモートセンシング技術も世界遺産などの保護と修復において役割を発揮しており、遺産のモニタリング・保護に向け欠かすことのできない技術だ。

 特に面積が広大な自然遺産の保護において、リモートセンシング技術はその他の技術ではまねできない利点を持っている。

 2011年3月から2012年6月、地球所は国際組織からの委託を受け、高解像度のリモートセンシング技術を駆使し、世界自然遺産であるベトナム・ハロン湾の環境変化のモニタリングを行った。王心源研究員は「ハロン湾海域は約1553平方キロメートルに達し、1969の島嶼が含まれる。中心エリアの面積は434平方キロメートルで、775の島嶼がある。人力だけではこれほど大きな面積の調査研究を完成させることができない。こうした場合役に立つのがリモートセンシング技術だ」と語る。

 リモートセンシング技術は自然遺産だけでなく、文化遺産の保護でも大きな役割を果たしている。

 地球所の王成研究員は「LIDAR(レーザー赤外線レーダー)は新たなリモートセンシング技術の1種で、物体の3D画像を取得できるというメリットを持つ。このため、文化遺産の保護に非常に適している」と語る。

 このほか中国はここ数年、リモートセンシング、地理情報システムなどの手段を総合的に活用し、観光地や遺産の建設プロジェクト、土地利用、生態系の変化、突発的火災などの動的モニタリング、クイック調査などを実現している。

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