2014年03月03日-03月07日
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中豪科学者、ALSのモデル豚の育成に成功

2014年03月07日

 中国とオーストラリアの科学者は筋萎縮性側索硬化症(ALS)にかかったモデル豚の育成に成功した。これはALSの疾患のメカニズムを解明し、治療薬の開発に対して理想的なモデル動物を提供することになる。研究成果はこのほど、世界的に権威ある学術誌「Cell Research」電子版に掲載された。光明日報が伝えた。
 中国科学院広州バイオ医薬・健康研究院教授の頼良学氏、中国科学院遺伝・発育生物学研究所教授の李暁江氏、オーストラリアモナシュ大学教授の肖志成氏、南方医科大学教授の姜暁丹氏が率いる研究チームは、5年弱の共同研究により成功したものである。
 有名な物理学者のスティーブン・ホーキング氏もALSを患っている。この慢性的かつ致命的な神経変性疾患は、中枢神経系内の骨格・筋肉の運動を制御する運動神経細胞の退化によるものだ。患者は上下の運動神経細胞の退化と消滅により筋肉に情報を伝えられなくなり、筋肉が萎縮し、最終的に神経系が自由に運動を制御する能力を完全に失い、麻痺状態に陥る。現在の研究結果によると、約10%の患者は家族からの遺伝によるもので、最も一般的な例はスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の遺伝子変異だ。
 ALSを完全に治療できる薬はまだ開発されていない。ALSによる病状は急速に悪化し、発症後まもなく最も基本的な生活能力を失うため、患者とその家庭および社会に多大な苦痛と重い負担をもたらす。研究中のモデル動物の多くはげっ歯類動物、つまりラットが中心で、人間の病状との間に一定の差がある。
 研究チームは動物クローン技術を用い、ALSを引き起こす遺伝子「変異型ヒトSOD」を豚の体内に植え込んだ。これらの豚、およびその子供はヒトALS患者の典型的な症状を示し、運動神経細胞が消滅し、下肢の筋肉が萎縮した。また年齢の増加に伴い、その運動能力が大幅に低下した。
 研究チームがモデル豚の病理学的な分析を実施したところ、この動物がALSの発症メカニズムを解明し、より効果的な治療薬を開発するための理想的なモデルであることが明らかになった。

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