2014年03月10日-03月14日
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地球観測衛星「高分1号」、マレーシア不明機の捜索に貢献

2014年03月11日

 国家重大科技特別プロジェクト高解像度対地観測システム応用システムのチーフエンジニア、中国科学院リモートセンシング・デジタル地球研究所副所長の顧行発氏は10日、「すでに地球観測衛星・高分1号が撮影した関連海域の画像を入手し、分析を進めた。多くの船舶が見られたが、事故機は確認されなかった」と語った。科技日報が伝えた。
 中国は「高分」、「海洋」、「風雲」、「遥感」の4シリーズの衛星(約10基)を動員し、マレーシア航空のMH370便の捜索活動に技術支援を提供している。
 月探査機「嫦娥2号」、「嫦娥3号」の顧問である葉培建氏は、「事故現場の捜索で、衛星は力を発揮できるが、一部の条件を満たす必要がある。衛星にはさまざまな種類がある。ある衛星は電子信号の収集が可能だが、その前提は航空機の事故前もしくは事故後に有効な電子信号が出されることだ。こうすることで、衛星は通過時に信号をキャッチできるようになる。ある衛星は昼夜を問わず、可視光線、赤外線、レーダーなどにより画像を取得できる。しかし画像の鮮明度については、設備の解像度に左右される」と指摘した。
 葉氏はまた、「すでに知られている場所のモニタリングの場合、調整により衛星をその場所に向かわせることができる。しかし事故現場を撮影する場合は、衛星は事故発生時にちょうどそこを通り掛かる必要がある」と述べた。
 世界の軌道上の衛星は1000基弱に達しており、通信、測位、気象、地球観測などの種類がある。そのうちの一部は、一定の捜索能力を持つ。
 顧氏は、「毎日多くの衛星が地球の写真撮影を行っている。森や海などで、航空機の残骸や情報が発見される可能性がある。中国の高分1号の解像度は最高で約2メートルに達する。世界のその他の衛星の場合、1メートル以内に達する。1−2メートルの大きさの目標物は、陸にあっても海にあっても撮影が可能だ」と説明した。
 顧氏は、「捜索海域の範囲が広すぎることが、今の最大の問題になっている。高分1号に搭載されている、解像度が2メートル/8メートル級のカメラの撮影幅は70キロで、事故現場の正確な位置を特定できれば、衛星を制御し観測できる。しかし位置が特定されていなければ、衛星による捜索は困難だ」と指摘した。
 衛星の観測は搭載設備により、全面的な観測と詳細な観測に分かれる。前者は範囲が広く、後者は精度が高い。葉氏は、「事故現場が見つからないうちは、まず全面的な観測に適した衛星で広範囲を観測し、疑わしい点を発見してから、詳細な観測に適した衛星で観測を進めることができる」と語った。一部の衛星(高分1号など)は、この二種類の設備を搭載しており、全面的な観測と詳細な観測を組み合わせることができる。顧氏は、「2メートル/8メートル級カメラの他に、解像度が16メートル級で、観測幅が800キロに達するカメラが搭載されている。その全面的な観測能力は世界でも最も先進的で、現在の捜索活動の中で大きな力を発揮できる。しかしこの幅広い捜索範囲の場合、1基だけではまだ不十分かもしれない」と述べた。
 また一定の解像度に達した衛星は、時間分解能が低いものが多い。時間分解能とは、衛星が同じエリアを重複して通過する時間の間隔で、解像度と反比例の関係を成すことが多い。
 顧氏は、「海外の広範囲の観測が可能な、解像度が10数メートルから30メートルに達する衛星の場合、この間隔は10数日もしくは20数日に達する。アメリカ航空宇宙局(NASA)は10日、マレーシア不明機の事故現場と思わしき地点の衛星写真を発表した。この画像を撮影した衛星は、毎日このエリアを2回観測できるが、解像度は250メートルとなる。中国は世界で最も先進的な中解像度衛星を持っている。例えば『環境』衛星の解像度は30メートルで、観測周期は約2日だ。高分1号は、4日に1度同じ地点を観測できる」と説明した。
 顧氏は、「衛星の観測周期は、今後さらに縮小される。中国は将来的に、地上から3万キロ離れた静止軌道に高解像度地球観測衛星を打ち上げる。この衛星の解像度は数十メートルに達し、観測範囲は地球の半分をカバーし、30分毎に写真を撮影できるようになる。この計画は5年内に実現される見通しだ」と話した。

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