中国の「衛星の父」と呼ばれる、中国科学院院士、月探査プロジェクト総設計者、国家最高科学技術賞受賞者の孫家棟氏は20日、南京市で開かれた「2014年第5回中国衛星測位学術年次総会」に出席した際に、現在の中国衛星測位産業の発展について、「中国の北斗衛星測位システムは運営が始まったばかりで、その全体水準はGPSとの間に一定の開きがあるが、地域内での使用上の指標、測位の精度などはGPSに完全に匹敵する」と語った。中国新聞網が伝えた。
中国は米国、ロシア、欧州に続き、グローバルな衛星測位システムの構築に着手した。中国が独自に開発し運行している北斗システムは、2012年よりアジア太平洋の全面的なカバーを実現し、すでに全地球航法衛星システム(GNSS)の4大システムの一つとなっている。中国衛星測位システムの建設の全体計画によると、2020年には36基の衛星による北斗システムが構築される。北斗の信号は全世界をカバーし、全世界に情報収集サービスを提供できるようになる。
孫氏は、「(中国は)今年(2014年)の年末に5基の試験衛星を打ち上げ、36基による全世界カバーの目標への道を探る。2007年から2012年12月27日までに打ち上げられた14基の北斗地域内衛星は、現在まで1年以上に渡り運行されているが、良好な状態を維持している」と述べた。
孫氏は10数年後の世界衛星測位システムの青写真を描き、「中国は現在、36基の衛星による世界的な測位サービスの構築を全力推進している。中国は2020年頃に、世界4大システムを融合させ、全人類の生活における時空情報の収集にサービスを提供する構想を持っている。4大システムは、それぞれ約30基の衛星を持つようになり、計120基以上の衛星が地球を周回することになる。これは将来的に、地球上のいかなる場所・時間でも、同時に10基の衛星によって測位されることを意味する。このデータの正確度と信頼性は、非常に驚異的なものとなる」と述べた。
孫氏は、「将来的に衛星測位産業は融合に向かい、データが共通化する。しかし各システムは自主制御能力を維持し、他者の衛星を利用しなくても、情報収集・伝送サービスを提供できる必要がある」と指摘した。
北斗システムの責任者である孫氏は、「現在の北斗システムの市場での使用率はGPSを下回り、市場での普及拡大が問題に直面している。例えばシステムの地上での使用の質、商業面での使用の利便性、価格面の競争力という問題がある。価格と生産量の間には切っても切れない関係があり、世界市場の大半のシェアを占めるGPSのチップと比べ、北斗のチップ価格は割高となっている」と説明した。
中国製の北斗システムを国際基準に合致させ、国際市場に進出し、家庭・企業への普及を拡大し、「宇宙に衛星を打ち上げる」から「地上で衛星を利用する」に移るまでは、まだ長い道のりを歩まなければならない。