2016年04月11日-04月15日
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科学実験衛星「実践10号」、マウスの胚の成長に成功

2016年04月18日

 哺乳類は宇宙環境で正常に繁殖できるだろうか?これは科学者がこれまでずっと模索してきた、最先端の課題の一つだ。中国人科学者は内モンゴル自治区ウランチャブ市で17日、宇宙でマウスの胚の成長に初成功し、世界で初めてマウスの胚が宇宙で成長する明瞭な画像を地上から目にしたと発表した。科技日報が伝えた。
 中国科学院動物研究所の段恩奎研究員は、マウスの胚の成長状況を紹介した。段氏の研究チームが担当するプロジェクト「微小重力条件下の哺乳類初期胚の成長の研究」は、4月6日に帰還型科学実験衛星「実践10号」と共に打ち上げられた。衛星打ち上げから十数時間後に返された画像を見た研究者は、マウスの細胞が分裂を開始し、成長を始めたことを確認した。2つの細胞が4つ、8つ、16個へと分裂していった。60時間後、そのうち一部は胞胚に成長した。
 人類による哺乳動物の細胞の宇宙成長の模索は、これまで3つの段階を踏まえてきた。第1段階は1996年で、米国のNASAはコロンビア号にマウスの2細胞期胚と8細胞期胚合わせて49の胚を積載した。しかし衛星を回収後に観察したところ、これらの胚は1つも成長していなかった。
 第2段階は2006年で、中国の実践8号衛星が宇宙育種実験を完了し、段氏のチームによるマウスの胚の成長に関する実験を行った。これには▽宇宙胚イメージングシステムを構築し、胚の宇宙における状況の観察を実現する▽マウスの胚の宇宙での成長を実現する――という2つの目標があった。1つ目の目標は達成され、画像がスムーズに地上に伝送されたが、2つ目は達成されなかった。段氏は失敗の原因の1つとして、胚が打ち上げ32時間前に衛星に積載されたことを挙げた。この32時間内に、2細胞期胚はすでに成長を開始していた。
 第3段階は今回の実践10号の実験だ。この実験のために、研究者は10年間で数万個の胚を使い100回以上の実験を行ってきた。研究者は現在、マウスの胚の宇宙での成長に関する画像を、地上で見ることができるようになった。
 前回の宇宙実験と比べ、今回の実験は技術面で大きな進歩があった。まず中国科学院上海技術物理研究所は、質の高い胚培養ケースを開発した。地上で胚の成長に関する実験を行う際には、まずCO2培養ケースが必要で、さらに通気用のボンベで気温と湿度を維持し、さらに顕微鏡で観察しなければならない。同研究所の張涛氏らはこのような「実験室」を、重さ17キロの、電子レンジと同じ大きさの培養ケースに圧縮し、高性能顕微鏡を搭載した。2つ目の進歩は、マウスの2細胞期胚が、衛星打ち上げ8時間前に積載されたことだ。3つ目は、研究者が開発した、胚の宇宙での発育に適した密封型培養システムだ。これらによって、胚は衛星打ち上げ後に成長を再開した。
 衛星は近日中に地上に帰還する予定だ。科学者は回収されたサンプルを直ちに実験室に送り、細胞生物学と分子生物学の分析を行い、宇宙環境が胚の成長を促進するのか抑制するのか、どのようなメカニズムが存在するのかを判断する。

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