中国科学院院士の王貽芳氏は14日午後6時、米ワシントンに飛ぶ旅客機に搭乗した。彼は米国科学振興協会(AAAS)年次総会に出席し、大型科学研究施設の世界協力サブ会議にて、中国人科学者の観点を紹介する。グローバル化は経済分野のみならず、科学の研究、特に大型科学研究施設においても重要だ。科技日報が伝えた。
中国科学院高能物理研究所の所長としての王氏はCEPC(円形電子・陽電子衝突型加速器)の主な提唱者・推進者だ。この大型円形加速器が科学的に必要であるか、300億元(約4884億円)という経費は高すぎるのではないか、プロジェクトの技術プランは実現可能かが国内で疑われるなか、欧州原子核研究機構(CERN)は春節(旧正月、今年は2月5日)前に次世代の大型円形衝突型加速器「FCC」の「コンセプト設計報告」を発表した。2ステップに分け、次世代のスーパー衝突型加速器の建設に巨額を投じる予定だ。
中国高エネルギー物理学者は2012年にCEPC計画を発表した。ところが、同計画が発表されたとたんに、科学界で大きな波紋を広げた。支持者は、これは中国高エネルギー物理学の重大な歴史的チャンス、世界をリードするチャンスであるとした。反対者は経費が巨額でコストパフォーマンスが低く、国家科学研究費が全体的に安定する状況下、このようなプロジェクトはその他の研究の経費を食い込むことになると考えた。
世界各国の1000人以上の科学者が6年を費やし、昨年11月14日に中国のCEPCの「コンセプト設計報告」をまとめた。
中国と欧州のプランを比較すると、CERNのFCCと中国のCEPCが大同小異であることが分かる。いずれも周長が100キロで電子衝突後に陽子加速という技術路線を歩んでいる。当然ながら総経費は異なり、中国はCERNの半分ほど。CEPCの1期プロジェクトは2030年に終了し、2期プロジェクトは2040年に終了する予定だ。FCCの1期プロジェクトは2040年頃に完了し、2期プロジェクトは2050年代後半に稼働開始を予定している。両方ともほぼ10年の時間差がある。
王氏は科技日報の単独インタビューに応じた際に、作業様式を見るとFCCは低エネルギーから高エネルギーへと徐々に増加していくが、CEPCはその両者をいつでも切り替えることができると述べた。また、「私はCEPCの作業方法の方が優れていると思う。異なる科学目標に基づき異なる作業方法をフレキシブルに選択できるが、FCCは固定的だ」と述べた。
王氏は「我々は現在まで、その他の国・地域と最も注目されている重要な大科学装置をめぐり直接競争を展開したことがなく、空白を埋める取り組みの方が多かった。超大型衝突型加速器の建設は、中国の高エネルギー物理にとって重大なチャンスだ。中国には10年の余裕があり、成功する大きな自信を持っている。世界の高エネルギー物理研究の勢力図を変えるかもしれない。このチャンスを逃せば、我々は空白を埋める作業を続けるしかない」と指摘した。
今回発表されたCERNのプランは、中国のプランの実行可能性をさらに裏付けた。CEPC計画は世界で初めて電子衝突後に陽子衝突に移行するという大型円形衝突型加速器のプランを打ち出した。しかしこの方針は当時、世界の科学者、特にCERNから認められなかった。王氏は「2012年まで、高エネルギー物理学者は高エネルギー加速器の未来の発展は直線衝突型加速器にあると考えていた。我々が円形衝突型加速器を提案すると、CERNの内部で白熱した議論がなされた。彼らは最終的に、スーパー衝突型加速器の発展において円形衝突型加速器を参考にすることを決定した。CERNの最初の方針は陽子衝突型加速器で、第1ステップの電子衝突型加速器ではなかった」と話した。
5年間の研究を経て、人々は先に電子で後に陽子というプランが、科学的にも技術的にも最も実現性が高いことを徐々に認識した。FCCプランも最終的にこの方針を選択した。これは科学と技術の両面から、CEPC設計案が正確であることを証明した。