2023年09月25日-09月29日
トップ  > 科学技術ニュース>  2023年09月25日-09月29日 >  ユーラシア大陸奥地で唯一の世界大気バックグラウンドステーション

ユーラシア大陸奥地で唯一の世界大気バックグラウンドステーション

2023年09月26日

 中国青海省海南チベット族自治州共和県の瓦里関山(標高3816メートル)にある瓦里関国家大気バックグラウンドステーションが丸29年稼働している。中国新聞網が伝えた。

 同ステーションは世界に32カ所ある世界大気バックグラウンドステーションの中で最も標高が高い。週に1度の「空気」収集の日には、李明観測員が「空気」収集設備を使って瓦里関山頂で空気を集める。

 李氏は「雨や雪、砂ぼこり、雷の日は収集できず、風速2メートル以下でも収集できない。風速が低すぎると無風状態と見なされ、空気が十分に混じらないからだ。このような空気は大気バックグラウンドの状況を反映できず、局地的な状況としかみなされない」と説明した。

「空気」を集める前には、ガラス瓶を空気で15分洗浄する。設備で加圧された空気を使うため、ガラス瓶の内部でパチパチという音がする。

 李氏は午前8時ちょうどに息を止め、設備を操作し、空気の収集を開始した。息を止めるのは、人が吐き出す二酸化炭素(CO2)が大気バックグラウンドを汚染するのを避けるためだ。手動での操作を終え収集設備から遠く離れると、李氏は大きく息をついた。2分間の空気収集完了後、李氏は再び息を止め設備に近寄り、手動で電源をオフにした。

 李氏は午後8時から9時まで、これらの作業を3回繰り返す。集められた「空気」は今週のユーラシア大陸奥地の大気成分の分析サンプルとなる。

 李氏は「高山ステーションであるため、空気のサンプル採取には厳しい要求がある。午前9時を過ぎると上昇気流が麓の汚染物質を運び、観測データに影響を及ぼす」と説明した。

 同ステーションの黄建青観測員は「毎回採取されたサンプルを中国気象局国家級大気成分実験室に郵送する。うち2本は世界気象機関GAW温室効果ガスセンター実験室に送られ、同時に分析される。分析結果のデータは世界で共有される」と述べた。

 30年近くにわたり蓄積してきた大量のデータにより、瓦里関バックグラウンドステーションの研究チームはユーラシア大陸奥地の温室効果ガスの濃度の変化を反映する「瓦里関カーブ」を作成した。このカーブは世界の気候変動を証明し、国連気候変動枠組み条約をサポートする重要な根拠であり、中国が世界の生態環境ガバナンスに積極的に参加し、牽引するモデルの一つでもある。

 中国大気バックグラウンド基準観測所の李富剛所長は、「バックグラウンドステーションは中国内外の複数の大学・科学研究機関と協力し、数十件の科学研究・試験を共同で展開している。ステーションは現在、毎日6万件以上のデータを生成している。観測体制は主要大気成分をカバーしている」と説明した。

 
※掲載された記事、写真の無断転載を禁じます