中国水稲研究所水稲生物育種全国重点実験室の張健研究員のチームは、合成生物学の手法によりイネの種子の含油量を2.3%から11.7%に増やした。これによりイネやトウモロコシ、ジャガイモ、キャッサバなど、高生産量でんぷん類食糧作物の搾油原料への転用に新たな技術的アプローチがもたらされた。研究成果はこのほど「植物通訊(Plant Communications)」(電子版)に掲載された。科技日報が伝えた。
論文の責任著者である張氏は「大豆やアブラナなどの搾油作物は通常、油脂とタンパク質を豊富に含むが生産量が少ないという特徴を持つ。例えば大豆の含油量は15~26%、タンパク質含有量は約40%で、1ヘクタールあたりの生産量は約2トンだ。イネやジャガイモなどの食糧作物は生産量が多いが、油脂やタンパク質の含有量がやや低い。例えばイネの含油量は2~3%、タンパク質含有量は約10%で、1ヘクタールあたりの生産量は約2トンとなっている。理論上、生産量を変えないことを前提とした場合、イネの含油量を2%から6%に引き上げることができれば、大豆に代わる油脂源にできる」と語った。
張氏はさらに「まず、イネの胚乳に特異的なプロモーターを利用し、シロイヌナズナ油脂合成の制限遺伝子を胚乳内で発現させることで、種子内の油脂合成効率を高めた。次にゲノム編集技術により、イネのデンプンを合成する重要遺伝子をノックダウンし、デンプン合成ルートの一部を塞ぎ、炭素源を油脂合成ルートに引き込んだ。それからイネのアリューロン層をネガティブコントロールする遺伝子をノックダウンし、油脂貯蔵組織であるコメのアリューロン層の厚みを増し、イネの種子における油脂の容量を拡大した。最終的に中国南方のイネ生産エリアにおける主要栽培品種『南粳46』で、含油量の多いイネ遺伝質を生み出した。その玄米の油脂の相対的含有量は2.33%から11.72%に上がり、これまで報告されているでんぷん類食糧作物の最高レベルとなり、大豆などの搾油作物と肩を並べた。1粒の含油量も0.5ミリグラムから1ミリグラムに増えた」と説明した。