中国四川省成都市でこのほど、ジャイアントパンダ国家保護研究センターが発足した。同センターは中国ジャイアントパンダ保護研究センターと成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地という2つの科学研究機関の資源を統合し、中国全土のジャイアントパンダ科学研究の優秀チームを集約したジャイアントパンダ科学研究協力・交流の世界レベルのプラットフォームとなる。光明日報が伝えた。
国家林業・草原局の関係者は「同センターは魏輔文院士(アカデミー会員)を筆頭とするジャイアントパンダ保護研究学術委員会とジャイアントパンダ保護国家イノベーション連盟を設立した。また国家林業・草原局ジャイアントパンダ重点実験室を建設し、ジャイアントパンダなどの絶滅危惧動物保護全国重点実験室の創設に注力する」と語った。
人工飼育から野生復帰の模索、野生ジャイアントパンダ個体群の回復から生態系全体の保護の実現へ。四川臥竜自然保護区などの建設が1963年に始まってから、ジャイアントパンダ保護のモデルと経験は、世界の生物多様性保護分野の成功例になった。
青蔵高原(チベット高原)の東端から横断山脈に沿って北の秦嶺に延びるこのエリアに、67のジャイアントパンダ保護区が次々と誕生した。2021年に設立されたジャイアントパンダ国家公園は、ジャイアントパンダやそのアンブレラ種に対し、より整備された連続的な広い住みかを建設した。現地で生息する1340頭の野生ジャイアントパンダは現在、全国の野生ジャイアントパンダ個体群の総数の71.89%を占めている。
中国では1953年に動物園でのジャイアントパンダの人工飼育が始まった。だが、飼育されたジャイアントパンダには、発情が難しい、妊娠が難しい、赤ちゃんの生存が難しいといった難題があり、長期にわたり解決されなかった。中国ジャイアントパンダ保護研究センターが1995年にこの3つの難題を解決すると、ジャイアントパンダの人工繁殖技術が大きく発展した。
ジャイアントパンダの人工繁殖・飼育管理、疾病予防などの体制の構築に伴い、中国の飼育ジャイアントパンダは当初の10頭から現在の670頭以上に増えた。個体群の自力による維持と持続可能な発展をほぼ実現し、世界の野生動物の人工繁殖に参考となる経験を提供している。
中国ジャイアントパンダ保護研究センターは2003年、ジャイアントパンダの野生化訓練を開始した。ジャイアントパンダ個体群の安定的な増加に伴い、ジャイアントパンダの野生復帰は2010年に再開のタイミングを迎えた。また「母パンダによる赤ちゃんパンダの育成」という野生化訓練方法で重要なブレイクスルーを果たし、臥竜核桃坪が中国初の野生化・野生復帰訓練における拠点となった。中国ジャイアントパンダ保護研究センター野生復帰プロジェクト執行責任者の呉代福氏は「野外の経験を持つ母パンダが自然環境に作られた育成エリアで出産する。この野生訓練をする赤ちゃんパンダを母パンダのもとで成長させ、野外の生存技能を習得させる。この全過程で人による干渉と影響を減らし、子パンダの野性を保つ」と述べた。
臥竜野生化訓練場で初めて誕生したジャイアントパンダのオスの赤ちゃん「淘淘」が2012年10月、個体群の密度が非常に低い四川省石棉県栗子坪に野生復帰し、自力での生活に向かった。「淘淘」は初めて「母パンダによる赤ちゃんパンダの育成」という方法により野生復帰に成功し、生き残った飼育ジャイアントパンダとなった。中国はこの20年近くでジャイアントパンダ野生化訓練技術体制と野生復帰後のモニタリング技術体制を構築した。
中国ジャイアントパンダ保護研究センター雅安基地で撮影した「シャンシャン(香香)」(11月8日撮影、資料写真)