2023年12月01日-12月08日
トップ  > 科学技術ニュース >  2023年12月01日-12月08日 >  大規模商用化に向けて進む中国の新エネ貯蔵産業

大規模商用化に向けて進む中国の新エネ貯蔵産業

2023年12月05日

 中国では新エネルギーを中心とした新型電力システムの構築加速に伴い、新型エネルギー貯蔵技術が多様な発展を遂げ、絶えず進化を遂げ、応用市場も開拓されて、産業のビジネスエコシステムがほぼ形成されている。世界でエネルギーのモデル転換が進む中、新型エネルギー貯蔵はテストやモデルの段階から大規模な商用化に向かい、急速発展期を迎えようとしている。

新型エネルギー貯蔵とは何か?

 新型エネルギー貯蔵は、揚水によるエネルギー貯蔵以外の電力供給(出力)を主要な形態とするエネルギー貯蔵技術を指す。新エネルギーを中心とした新型電力システムを構築するための重要な支えであり、新型リチウムイオン電池、フロー電池、圧縮空気エネルギー貯蔵、機械的エネルギー貯蔵などが含まれる。

 業界関係者によると、新型エネルギー貯蔵は、従来の揚水によるエネルギー貯蔵と比べ、建設期間が短い、立地を柔軟に選択できる、反応が早い、調節能力が高いなどの優位性がある。中国でエネルギーのグリーン・低炭素化へのモデルチェンジが持続的に推進されるのに伴い、新エネルギー発電量の比率が上昇し、新型エネルギー貯蔵に対する電力システムのニーズがますます高まっている。

応用シーンが拡大

 江蘇省蘇州市にある常台高速道路の白洋湖サービスエリアでは、250平方メートルのカーポートの上部に設置された550ワット太陽光発電ユニットがまぶしい光を放ち、グリーン電力エネルギーを絶えず生み出しており、年間発電量は5万3000キロワット時(kWh)に達する。カーポートには新エネ車が次々と充電のためにやって来て、充電速度が最速の状態の場合、「1秒の充電で1キロ走れる」という。

 ここは、協鑫集団と蘇州交通投資集団が共同で建設した、省内の高速道路サービスエリアで初の「光貯充(太陽光発電・エネルギー貯蔵・エネルギー充電)一体化」充電ステーションで、一度に新エネ車20台の充電を行うことができ、通年で新エネ車10万台にサービスを提供できる。

 張家港協鑫超能雲動公司の郝三存社長は「光貯充一体化エネルギー管理システムでは、充電ステーションのエネルギー貯蔵システムがカーポートの太陽光発電で生まれたグリーン電力を効果的に蓄えることができる。オフピーク時間を利用して蓄電し、ピーク時間帯には電気自動車(EV)に電力を供給して、ピークカットを行い、充電効率のブレを抑えることが可能だ」と説明した。

 充電・電池交換ステーションから工業・商業へ、さらには新エネルギーステーション、電力ネットワークのピークカット・ピークシフトへ。中国の新型エネルギー貯蔵技術は多様な発展を遂げ、応用シーンが絶えず拡大している。リチウムイオン電池や圧縮空気エネルギー貯蔵などの技術は世界のトップレベルにあり、リチウムイオン電池は、商用化されてからエネルギー密度が5倍近くになり、サイクル回数は1万2000回を超えた。

新型エネルギー貯蔵が大規模商用化段階へ

 中国能源建設の宋海良董事長は「新型エネルギー貯蔵は、高比率の新エネルギー電力システムを構築する破壊的イノベーションであり、エネルギー革命の流れに促されて大きく前進し、テスト・モデル段階から大規模商用化に向かっており、急速発展の黄金期を迎えた」との見方を示した。

今後は1兆元規模の市場に

 興儲世紀科技の劉継茂総裁補佐は「2022年に世界で新たに稼働した電気エネルギー貯蔵プロジェクトの設備容量規模は前年同期比98%増の30.7ギガワット(GW)に達した。予想では、2025年の世界の電気化学エネルギー貯蔵市場の規模はギガワット時(100GWh)を超え、2030年には世界で累計250GWhに達する見込みだ。新エネルギーの風力発電、太陽光発電の10%を備蓄するとして計算すると、世界のエネルギー貯蔵市場は1兆元(1元=約21円)規模に達し、その中で新型エネルギー貯蔵が中心的役割を果たすだろう」と述べた。

 現在、中国では新型エネルギー貯蔵産業のビジネスエコシステムがほぼ形成されている。22年には関連企業が3万8000社に達し、リチウムイオン電池によるエネルギー貯蔵産業チェーンの付加価値額は2000億元に迫った。福建省や広東省、四川省などでエネルギー貯蔵分野の先進製造業クラスターが急速に発展しつつあり、リチウムイオン電池分野で複数のリーディングカンパニーが生まれており、「専精特新(専門化・精密化・特徴化・新規性)」の小巨人企業(高い成長性または大きい発展のポテンシャルを持つテクノロジーイノベーション中小企業)も200社以上育成された。

 中関村エネルギー貯蔵産業技術連盟(CNESA)理事長で中国エネルギー研究会エネルギー貯蔵専門委員会代表委員の陳海生氏は「今年は新型エネルギー貯蔵の新規増加設備容量が15~20GWに達する」と予測している。

 
※掲載された記事、写真の無断転載を禁じます