2024年02月05日-02月09日
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広東省のLNG受入ターミナルで魚介類を養殖

2024年02月09日

 中国海洋石油集団有限公司(中国海油)広東大鵬LNG受入ターミナルでは、液化天然ガス(LNG)の冷熱エネルギーを利用した養殖モデルプロジェクトが実施されている。養殖されている魚介類はバイタルサインが安定し、脂がのった時期に入っている魚介類もある。人民日報海外版が報じた。

 LNGと魚介類。一見「接点」がないように見えるこれらの「出会い」と「コラボ」にはどんなメリットがあるのだろう?

 養殖拠点の責任者である樊さんは「魚の養殖をして30年以上になるが、LNG受入ターミナルでの養殖は今回が初めてだ。ここは水もよく、水温が低いのもいい」と話した。大型養殖用水槽の横に設置されている温度計を見ると、15℃を指していた。

 LNGタンクでは、氷点下162℃という超低温でLNGが貯蔵されている。そのため、受入ターミナルに到着すると、まず加熱してLNGを気化してから、ガス管を通して各世帯へと届けられる。その気化の過程では、大量の冷熱エネルギーが発生する。広東大鵬LNG有限公司エネルギー技術シニアマネージャーの牛軍鋒氏は「受入ターミナルは『大きな冷凍庫』のようだ。2023年、当社の受入ターミナルの冷熱エネルギー処理量は800万トン以上だった。100%転化できるとすると、十数億キロワット時(kWh)の電気に相当するため、利用しないのはもったいない」と説明した。

 これは何に利用できるのだろうか? そう考えた時に魚介類の養殖案が上がった。LNG気化の過程では、大量の海水が使われる。濾過処理された海水は、受入ターミナルシステムに送られ、熱交換してLNGが気化する。熱交換が終わると、海水は南方地域では非常に貴重な低温海水となる。熱湯で冷たい牛乳を温めると、牛乳が温まってから熱湯が冷めるようなものだ。

 広東大鵬LNG有限公司の郝雲峰総裁は「LNGとの熱交換が終わった海水の水温は5℃ほど下がる。季節によって違うが、15~25℃の間で維持されており、経済価値の高い魚の生長に非常に適している」と語った。

 水質については、同プロジェクトでは、フィジビリティスタディの時から、厳しい水質の検査を定期的に行っているという。大鵬受入ターミナルは、水質が高い海域にあるほか、海水は何度も濾過され、電気分解して発生した微量の次亜塩素酸ナトリウムによって殺菌されたうえで、熱交換システムへ入る。こうしてできた海水は低温・無菌で、酸素溶解効率も高く、非常に貴重な養殖に使うことができる天然で高品質の低温海水となる。

 では、どのように水温を安定させているのだろう? 牛氏は「設計の段階で、養殖に必要な冷熱エネルギーを算出し、マッチング度の研究も行った。そして、養殖技術のシミュレーションを繰り返し行い、ベストな冷熱エネルギー供給技術を選出した。経済価値の高い冷水魚は、水温に敏感であることを考慮し、プロジェクトグループは、LNGの冷熱エネルギー専用の水温コントロールシステムを開発した。魚介類が『クーラーの効いた部屋』に住んでいるかのようで、快適に暮らすことができる」と説明した。

 この養殖場で育った最初の魚介類が3~4月に、市場で販売される見込みだ。それに向けて、現在、プロジェクト関連の検査や証明書の申請といった準備が行われている。海水1立方メートルの温度を5℃低くするために、5.8kWhのエネルギーが必要とされるが、養殖プロジェクトの冷熱エネルギーを利用すると、一般社会で使われる電気を年間197万キロワット(kW)節約し、二酸化炭素の排出を1800トン削減することができる。これは年間1800本の植林に相当する。

 
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