バイオ製造は生物学、化学、工学など複数の技術を融合させたもので、クリーン、高効率、再生可能などの特徴がある。B型肝炎ワクチンやインスリン、エタノール燃料などは、いずれもバイオ製造技術を利用して生産された製品だ。バイオ製造は「第4次産業革命」をリードするポテンシャルを備えており、市場規模は今後1兆元(1元=約21円)規模に達し、世界各国の競争分野になると見られている。中国もバイオ製造を戦略的新興産業に組み込み、「新たな質の生産力」を高めるための重要手段の一つと見なしている。中国新聞網が伝えた。
市場で非常に人気のある魚用タンパク質飼料は、栄養価が高く、粗タンパク質の含有量は80%に上る。これが製鉄所の製錬過程で発生した工場排気ガスを利用して生産されたものとは、誰も思わないだろう。
この飼料を生産する首鋼朗沢は首鋼集団の子会社で、製鉄所の工場排ガスを利用してタンパク質飼料とエタノール燃料の生産を実現した。10年前、同社は首鋼集団の工場排ガスを処理するために、ガス発酵技術を中国国内に導入した。しかしこの技術は実験室の中でしか検証されておらず、工業化実現にはまだ長い道のりがあった。同社は長年にわたる技術開発を経て、最終的にシステムの全製造工程を開発して大量生産を実現した。
バイオエタノールはアルコールの一種で、従来の生産方法は主にトウモロコシや小麦などデンプンを豊富に含んだ穀物を発酵させて糖分を抽出し、その糖分を利用してエタノールを生成するというものだった。この技術のメリットは難易度が低く、実現が容易なことだが、欠点は穀物の消費量が多く、国の食糧安全保障に影響することだった。
10年以上にわたる努力を経て、中国では、わらによる糖の生産が実現し、さらにその糖を利用してエタノールを生産する技術がブレークスルーを果たした。現在の技術では約15万トンのわらから3万トンのエタノールしか生産できないが、中国はわらの生産量が多いため、この技術が全面的に普及すれば、既存技術にとって革命的な出来事になるだろう。
事実が証明するように、バイオ製造は既存の製造業を根本的に変える生産モデルだ。「バイオ+医薬品」「バイオ+化学工業」「バイオ+エネルギー」「バイオ+軽工業」などこれまでにない新しい生産方法を利用して、組み換えタンパク質の医薬品、バイオジェット燃料、生分解性プラスチックなど数多くの新製品が生み出されている。バイオ製造業は今後の見通しが非常に明るく、予測では、世界のバイオ製造の生産高は30兆ドル(1ドル=約149円)に迫っている。バイオ製造業のビジネスチャンスは無限であるが、中国のバイオ製造中核産業の付加価値額は、工業付加価値額全体の2.4%にとどまっており、今後大いに伸びる可能性がある。
バイオテクノロジーは新たな質の生産力を高める手段の1つとして、国の戦略的新興産業に認定された。このため中国では複数の政策措置が策定された。
長江デルタ地域に産業クラスターが形成され、華北地域と華中地域には数多くの主力企業が存在する。国の強力な支援の下、新技術が次々に誕生し、バイオ製造の発展の方向性を牽引するとともに、将来の生産モデルを再定義している。
バイオ製造は今後、採鉱や金属精錬、電子情報、環境保護などの分野に広がる可能性もあり、明るい発展の見通しを持ち、経済成長の重要な原動力になることが期待されている。
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