メキシコで日用品スーパーを経営するカルロス・ロドリゲスさんは、中国浙江省義烏市の玩具工場で買い付けをすることになった。国境を越えた提携が実現したきっかけは、義烏小商品市場の公式ウェブサイトでロドリゲスさんが見た動画だった。動画では玩具工場のオーナーである孫麗娟さんが流暢なスペイン語で自社製品を紹介しており、興味を持ったロドリゲスさんは義烏に仕入れに行くことを決めた。中国青年報が伝えた。
孫さんは実はスペイン語を話せるわけではなく、「すべてはハイテクのおかげ」だと言う。孫さんは昨年、義烏市場で初めてAIデジタルヒューマン技術を使用した人物となった。
浙江中国小商品城集団は2023年10月、世界初の商品貿易分野に特化した大規模言語モデルを発表するとともに、新たにアップグレードした「Chinagoods AI智創サービスプラットフォーム」を立ち上げた。このプラットフォームは、AI商品発表や多言語動画翻訳などの機能を搭載している。孫さんはその中のアプリを利用して、動画でデジタルヒューマンとして登場し、AI技術を使って制作した中国語の動画を36言語に翻訳した。現在、1万以上の事業者がこの機能を利用して世界中の顧客とコミュニケーションを図っている。
多言語動画は、孫さんのビジネスに新たな道を開いた。以前は新商品を発売するたびに顧客一人一人に説明するのに苦労していたが、今ではビジネスモデルが変わり、動画アカウントを作成したことで、顧客のほうから連絡が来るようになった。
ロドリゲス氏さんは孫さんの動画のフォロワーの一人だ。「人工知能(AI)の普及と応用は、私たちが最新の商品モデルや機能の特性、例えば玩具の材質や機能を知るのに役立っており、市場により適した商品を見つける助けになる」と語った。
「世界最大級の卸売市場」である浙江省義烏市は、中国の貿易のバロメーターと見なされてきた。世界経済の構造が複雑に変化する中、義烏市は24年第1四半期(1~3月)に一定の成果を挙げた。貿易額は前年同期比25.5%増の1482億5000万元(1元=約22円)で、うち輸出は20.5%増となった。
越境ECは義烏市の貿易における「店舗を構えて客を待つ」モデルを変え、AI技術による「オンライン行商」が加速した。同市市場発展委員会の統計によると、今年第1四半期における義烏市のネット通販業者は前年同期比27.39%増の累計63万7700社で、うち新規のネット通販業者は4万社以上増加した。これは「平均3.1分で1つのネット通販業者が誕生した」計算になる。