2024年07月29日-07月31日
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中国の科学者ら、月の土壌から分子水を初発見

2024年07月30日

 中国科学院物理研究所によると、同院の研究員らが北京科技大学など他の機関の研究者と協力し、月探査機「嫦娥5号」が持ち帰った月の試料から水分子とアンモニウムを豊富に含む未知の鉱物結晶体「ULM-1」を発見した。科学者が月の土壌から分子水を発見したのは今回が初めてで、水分子とアンモニウムが月に存在することを明らかにした。人民日報が伝えた。

 研究は、中国科学院物理研究所/北京物性物理学国家研究センターの陳小竜研究員、金士鋒副研究員、博士課程生の郝木難氏らが、北京科技大学の郭中楠副教授、天津大学エンジニアの殷博昊氏、中国科学院青海塩湖研究所の馬雲麒研究員、鄭州大学エンジニアの鄧麗君氏らと協力して実施した。

 月に水があるかどうかは、月の進化の研究と資源開発にとって極めて重要だ。1969~72年に採取されたアポロの試料研究では、水を含む鉱物は見つからず、その後、月には水が存在しないことが学界の基本的な前提となり、このことは月の火山の進化や月と地球の起源の認識などの問題に重要な影響を与えた。1994年、研究者はクレメンタイン探査機によって月の両極を観測し、極地の「永久影」の土壌に水の氷が存在する可能性があることを提起した。

 2009年、チャンドラヤーン1号に搭載された月面鉱物マッピング装置が、太陽風による水酸基または水分子の信号が月面に存在することを発見した。

 同年、月観測・リモートセンシング衛星が秒速2.5キロで月の永久影に衝突。衝突時の砂埃のリモートセンシング測量で水の信号が示された。

 近年のリモートセンシングデータは、月の照らされた領域に水分子が存在する痕跡を示しており、科学者は高感度の特性評価技術を利用し、当時採取されたアポロ月試料の一部のガラスと鉱物から100万分の1スケールの「水(H+、OH-またはH2O)」を発見したが、水分子の存在に関する決定的な証拠はなかった。

 今回の研究では単結晶回折および化学分析により、これらの月の水とアンモニウムが(NH4,K,Cs,Rb)MgCl3·6H2Oという水和鉱物の形で現れることを発見した。この鉱物の分子式には6つの結晶水が含まれ、試料内の水分子の質量比は41%に達する。赤外スペクトルとラマンスペクトルでは、水分子とアンモニウム由来の特性ピークがはっきり観測された。ULM-1の結晶体構造と組成は地球上で近年発見された珍しい噴火口鉱物と似ている。地球上のこの鉱物は、熱い玄武岩と水・アンモニアを豊富に含む火山ガスとの相互作用によって形成されたもので、これは月の水やアンモニアの発生源に関する新たな手がかりを提供している。

 この発見の正確性を証明するため、研究では厳密な化学・塩素同位体分析を行った。ナノスケール二次イオン質量分析のデータによると、同鉱物のCI同位体の構成は地球の鉱物と大きく異なり、月の鉱物と一致した。研究者は同鉱物の化学成分と形成条件を分析し、地球の汚染またはロケットの排気ガスをこの水和物の発生源から除外した。同鉱物の存在は、月の火山ガスの組成に重要な制約を与えている。熱力学的分析によると、当時の月の火山ガスの含水量の下限は、現在地球上で最も乾燥しているレンガイ火山に相当した。これは複雑な月の火山の脱ガスの歴史を明らかにしており、月の進化プロセスを探る上で重要な意義を持つ。

 この水和鉱物の発見は、月の水分子に水和塩という形が存在する可能性を明らかにした。揮発しやすい水の氷と異なり、この水和物は月の高緯度地域(嫦娥5号の試料採取地点)でも非常に安定している。これは月の広く照らされた領域でも、この安定的な水和塩が存在し得ることを意味し、未来の月資源の開発・利用に新たな可能性をもたらしている。

水分子とアンモニウムを豊富に含む未知の鉱物結晶体「ULM-1」の写真と成分組成
(画像出典:中国科学院のウェブサイト)

物理研究所(中国科学院傘下の研究所)
北京科技大学
天津大学
青海塩湖研究所(中国科学院傘下の研究所)
鄭州大学
 
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