中国の科学者らがこのほど、ポリマー熱電材料分野の研究で重要な進展を遂げ、ポリマーマルチサイクルヘテロ接合(PMHJ)熱電材料を開発した。これは材料の熱電性能を大幅に高めるもので、高性能プラスチック系熱電材料の研究に新たなアプローチをもたらすものとなる。光明日報が伝えた。
プラスチックは電気を通さないと思われがちだが、実際には電気を通すプラスチックが多く存在する。これらのプラスチックは導電性ポリマーと呼ばれ、科学者はその薄膜に温度差を生じさせることで発電できることを発見した。
今回の成果は中国科学院化学研究所の朱道本・狄重安両氏の研究チーム、北京航空航天大学の趙立東氏のチーム、および中国内外の7つの研究チームの協力によるものだ。関連論文は7月24日、国際的学術誌「ネイチャー」に掲載された。
プラスチックの導電性が認識されると、その柔軟性や加工の容易さ、低コストなどの特徴により、フレキシブルディスプレイの製造を可能にした。論文の責任著者である狄氏は「多くの導電性ポリマーは熱電材料として使用でき、これらの材料に温度差を加えると、材料の両端に起電力が生じる。また、この材料の両端に導電回路を構築して電圧を加えると、材料の両端に温度差も生じる」と説明した。
こうした現象により、応用の見通しが拡大した。例えば、貼り付け式やウェアラブルのグリーンバッテリー、温度を制御できる服などが考えられるが、これらの機能を実現するには、高性能なポリマー熱電材料の開発が必要となる。これは現在、材料科学の最先端であり、最も挑戦的な方向性の一つとなっている。
研究者によると、今回開発されたPMHJ熱電材料は2種の異なるポリマーを利用して周期的に配列したナノ構造を構築。それぞれのポリマーの厚さは10ナノメートル以下で、2種の材料の界面は分子層約2個の厚さとなる。このナノ閉じ込め構造は材料の熱電性能を大幅に高めることで、高性能プラスチック熱電材料の研究に新たなアプローチをもたらしている。
研究者はその後の実験により、PMHJ構造が優れた汎用性を備え、加工方法が溶液調製技術と互換性を持ち、エネルギー供給部品などで応用のポテンシャルを持つことを発見した。
今回の研究は、既存の高性能ポリマー熱電材料が熱輸送制御に依存しないという認識の限界を打破し、プラスチック熱電材料分野の持続可能な発展に新たな道を切り開いた。研究者は「近い将来、体温で携帯電話の充電を行ったり、焚き火をキャンプ用の電力源にするなど、この材料によって身近なクリーンエネルギーが生まれることになるかもしれない」と説明した。
サイエンスポータルチャイナ事務局が、中国の科学技術に関するニュース記事を人民網と共同通信の記事より選んで、日々届くフレッシュなニュースとしてお届けしています。
下記よりご覧ください。