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中国の科学者、月探査に大規模AIモデルを使用

2024年09月05日

 中国科学院地球化学研究所と阿里雲(アリババクラウド)はこのほど、世界初の「月科学マルチモーダル専門大規模AIモデル」を発表した。大規模AIモデルをはじめとする生成AIが、月科学研究に新たなチャンスをもたらす。新華社が伝えた。

 深宇宙探査技術の急速な発展に伴い、月探査データが爆発的な成長を見せている。中国科学院地球化学研究所党委員会委員の劉建忠研究員は「全世界の月・惑星関連探査データは現在2PB(ペタバイト)を超えている。月に密集するクレーターは、月自体の進化に重要な影響を及ぼすが、数が多くて形態が複雑で変化に富んでいるため、その研究は非常に複雑だ」と述べた。

 劉氏は「現在最も多く統計を取っているのは、直径1キロ以上のクレーターで、最新統計データでは100万個以上となっている。クレーターの直径が小さくなるにつれ、その数は指数関数的に増えていく。あらゆる種類のクレーターを識別し、その統計を取ることは、手作業ではほぼ実現できないだろう」と続けた。

 急速に発展する大規模AIモデルは、この問題にソリューションをもたらしている。阿里雲智能集団副総裁で、ソリューション研究開発部責任者の曽震宇氏は「月のクレーターの年代や形態の識別では、月科学マルチモーダル専門大規模AIモデルの精度は最大80%以上に達し、予想を超えている。双方の協力が深まるにつれ、マルチモーダル大規模AIモデルはさらに月の地質の分析・研究に活用できる」と述べた。

 劉氏はさらに「大規模AIモデルを利用することで、クレーターの識別効率を大幅に高め、研究コストを下げることができる。このプロジェクトでは、当研究所は月や惑星関連の資料と文献を提供した。2万件近くのPDF文書で約50TB(テラバイト)以上だった。阿里雲はこれらの文書のデータ処理を行い、大規模AIモデルを訓練する知識センターに変えた」と語った。

 中国科学院院士(アカデミー会員)で、中国月探査事業初代首席科学者の欧陽自遠氏は「月専門大規模AIモデルは大量のデータ処理を大幅に加速させ、研究者が新たな科学の発見を発掘できるようサポートする」と述べた。

 
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