中国科学院国家天文台の李春来氏、中国月探査・宇宙プロジェクトセンターの胡浩氏、北京制御工学研究所の楊孟飛氏が率いる共同研究チームは、英文誌「NSR(National Science Review)」に、月探査機「嫦娥6号」が持ち帰ったサンプルに関する初の研究論文を発表した。中央テレビニュースが伝えた。
論文によると、嫦娥6号のサンプルは低密度を持ち、その構造が緩く空隙率が高い。顆粒を分析したところ、月の土壌の粒径は双峰型の分布で、サンプルがさまざまな材料源による混合作用を受けた可能性を示唆していた。嫦娥5号のサンプルと比べると、今回のサンプルは斜長石の含有量が大幅に増えているが、カンラン石の含有量が非常に少ない。これは同エリアの月の土壌が、非玄武岩質物質の影響を受けたことを物語っている。
鉱物学的分析によると、嫦娥6号の月面土壌サンプルの主な鉱物相の組成は、斜長石(32.6%)、輝石(33.3%)、ガラス(29.4%)で、ガラスの含有量はアポロサンプルの下限に近い。またサンプルからは少量の斜方輝石が検出され、非玄武岩質物質の存在を示唆している。
さらに、地球化学分析の結果、嫦娥6号のサンプルは酸化アルミニウム(Al2O3)と酸化カルシウム(CaO)の含有量が高いのに対し、酸化鉄(FeO)の含有量が相対的に少ないことが分かった。これは月の海の玄武岩と斜長岩の混合物の特徴と一致する。また、サンプルのトリウム(Th)、ウラン(U)、カリウム(K)などの微量元素の含有量はKREEP玄武岩を大きく下回り、月表側の嵐の大洋のクリープ地形のアポロミッションや嫦娥5号ミッションのサンプルとの大きな違いを示している。
嫦娥6号のサンプルには火山活動の歴史を記録した玄武岩だけでなく、その他のエリアの非玄武岩質物質も混ざっている。これらのサンプルは月の太古時代からの「メッセンジャー」となって、月早期の衝突の歴史、月裏側の火山活動、月内部物質の構成の研究に重要な一次資料を提供している。