2024年09月24日-09月30日
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クリーンエネルギーが南極の観測をサポート

2024年09月26日

 中国の極地観測今年、40周年を迎えた。南極観測においてエネルギー利用技術は重要な役割を果たしている。科技日報が伝えた。

 このほど開かれた2024中国極地科学学術年次総会で、「南極クリーンエネルギー利用技術12年発展綱要」が発表された。これは、南極のクリーンエネルギー設備やシステム、運用保守など基幹技術の研究開発に方向性を示すもので、中国極地研究センター(中国極地研究所)や太原理工大学、山西省エネルギーネットワーク研究院、中国電子科技集団公司第十八研究所、清華大学などが共同で作成した。

 南極は地球最大の淡水資源バンクであり、気候環境変動の傾向を示す場所でもある。また、南極には千種以上の魚類や220種以上の鉱産物、数百億バレルの石油埋蔵量がある。人類の南極での活動範囲が持続的に拡大していることに伴い、汚染を防ぎ、手つかずの極地環境を守ることが、各国の南極科学観測活動の重要な関心事になっている。

 太原理工大学電気・動力工学学院の竇銀科副院長は「2022年の世界の南極での活動において、エネルギー消費に占める燃料の割合は82%だった。燃料メインの南極エネルギー消費構造が引き起こす環境汚染などの問題に注意すべきで、南極でのクリーンエネルギーの利用は極めて重要だ」と語った。

 各国は近年、南極を守るため、クリーンエネルギーのさまざまな模索に取り組んでおり、中でも太陽光と風力が主な開発対象となっている。綱要によると、2022年には20カ所以上の南極観測基地でクリーンエネルギー発電装置が設置され、うち50%以上が太陽光もしくは風力を利用している。中国は現在、泰山基地に80キロワット(kW)風力発電と60kW太陽光発電施設を設置している。

 しかし、南極の過酷な環境において、太陽光と風力発電設備は往々にして、安定性と高い効率を維持できない。山西省エネルギーインターネット研究院科学イノベーション部の薛屹洵部長は「現在は南極環境の特徴に合わせたクリーンエネルギー技術の系統的な応用が不足しており、まだ模索の段階にある」と述べた。

 南極の過酷な環境に対応できるクリーンエネルギーシステムは、電気・熱・石油などのエネルギー資源をメインとする典型的なマルチエネルギーフローシステムだ。これは各種エネルギーフローを集め、効率的な利用を行う複雑なエネルギーシステムで、各種エネルギー間の相互補完と切り替えにより、全体的なエネルギー利用効率を高めている。薛氏によると、中国内外の多くの研究機関が近年、このシステムの研究を広く行っているが、依然として数多くの課題に直面しているという。

 薛氏は「南極クリーンエネルギーシステムの発展は、安全で効率的、グリーンで便利、信頼できる設備、マルチエネルギー相互補完、スマート融合という重要な特徴を兼ね備える必要がある。南極環境におけるエネルギー設備の運転と、南極エネルギーシステムのマルチエネルギー相互補完を物理的基礎とし、南極環境における情報物理システムのスマートな融合をデジタルサポートとし、南極エネルギーシステムの建設から運転、運用保守に至る安全で効率的な管理を実現し、南極科学観測基地と野外観測基地、南極交通システムのエネルギー構造を最適化する必要がある」と説明した。

 綱要は、南極クリーンエネルギー発展の全体目標を達成するため、2025年までにクリーンエネルギー設備とシステムの環境適応性の難題を解決するとしている。また、2030年までに中国南極観測基地のクリーンエネルギー利用のモデル転換と高度化を全面的に完了し、安全で効率的、グリーンで便利、マルチエネルギー相互補完、スマート融合などの目標をほぼ達成する。さらに2035年までに南極科学観測基地クリーンエネルギー供給技術体制を形成し、中国の南極観測事業を新たな段階に押し上げるとしている。

 
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