南京大学の研究チームがアルパカの体内からHIV受容体と結合する抗体を分離した。同抗体は実験において99%以上の有効率でHIVを抑制し、優れた広域スペクトル性と抗ウイルス活性を示した。関連成果はこのほど、国際的学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。新華社が伝えた。
論文の共同責任著者で同大学医学院の呉稚偉教授は「臨床上では主に抗HIV療法によりHIVの複製を抑制している。効果が顕著で、患者の寿命を効果的に延ばすことができるが、ウイルスの深刻な薬剤耐性を生じさせる可能性があるため、新しい治療法の研究が必要だ。現在のHIV新薬開発のアプローチは、主にウイルスの宿主細胞への進入プロセスから着手する。このプロセスでは『CD4』という名の受容体が『ドアノブ』の役割を果たし、ウイルスはこれを利用して初めて細胞の『ドア』を開くことができる」と説明した。
呉稚偉氏はさらに「チームはアルパカから1000個ほどのCD4のナノ抗体を分離した。うちNb457という抗体はHIV抑制の可能性を示した。チームは世界中の代表的な117種のHIV株をシミュレーションした一連の疑似ウイルスを作成した。Nb457抗体と疑似ウイルスの相互作用後、この抗体が116種の株の感染を効果的に抑制し、優れた広域スペクトル性と抗ウイルス活性を示したことが分かった」と述べた。
論文のもう一人の共同責任著者である南京大学医学院の呉喜林研究員は、「実際のウイルスの試験では、Nb457の遺伝子工学的な改変によって得られた三量体ナノ抗体が、HIVに対する効果的な抑制を実現した。その後のマウスを使った実験では、HIVに感染したマウスに三量体ナノ抗体を注射した後、研究者はその体内からウイルスをほとんど検出できなかった。また薬剤耐性の突然変異も見られなかった」と説明した。
呉稚偉氏は「HIVは変異が急速で、薬剤耐性になりやすく、薬剤の効果が低下する。今回発見された新抗体はウイルスそのものではなく、CD4というドアノブを狙ったものであるため、ウイルスの薬剤耐性を生じさせにくく、HIV新薬研究開発や臨床治療にとって重要なヒントになる」と語った。