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機械化進むゴマの収穫 効率的な新品種が開発

2024年10月23日

 中国河南省周口市では、特産のゴマの収穫作業が進んでいた。農家の宋福利さんは「ゴマがムギと同じように大型機械で収穫できるなんて想像もしていなかった」と驚きの声を上げた。新華社が伝えた。

 長年、ゴマを栽培してきた宋さんは「これまではゴマが成熟すると、ちょっと触れただけでも鞘がパチンとはじけて、実が地面に落ちてしまっていた。自分たちは気を付けながら片手でゴマの枝をつかみ、もう片方の手で鎌を使って枝を刈り取った。それからまとめて縛り、布の上に置いて天日干しし、完全に乾燥させてから、実を取り出していた。1人が1日に刈り取れるのは0.5ムー(1ムーは約6.7アール)くらいが限界だった」と語った。

 今では中型収穫機なら1日に6.7ヘクタール、大型収穫機なら10ヘクタール以上の刈り取りが可能だ。しかし、大きな機体の収穫機がゴマの枝に触れてもゴマの実は落ちないのはなぜだろう。

 周口市農業科学院の高樹広副研究員は「ゴマの鞘がはじけて、実も出てきているが、一番外側にあるゴマの数粒をよく見ると、下にある実を押さえ込んでいて、鞘がはじけて開いたところから実が出ないようになっている。だから実が簡単に落ちるようなことはない」と説明した。

 高さんが少し力を入れてゴマの鞘を握ると、鞘は完全にはじけて、中から実が全部飛び出した。高さんは「これは河南省農業科学院ゴマ研究センターが育成した新品種『豫芝ND837』で、鞘がはじけにくく、機械による収穫に適しているといった特徴があり、ゴマの実の落ちやすさや機械化生産レベルの低さといった課題を解決した。この品種は完全に成熟してから収穫することができ、手作業よりも収穫日を数日遅らせることができ、生産量を増やせる」と語った。

 河南省農業科学院ゴマ研究センター長の張海洋氏率いるチームが2007年からこの品種の開発を進めてきた。21年に省のゴマ新品種の鑑定に合格し、植物の新品種として権利が保護されるようになった。その後、中国国内で普及拡大が進められた。現在、機械で収穫できるこの新品種の栽培面積は10万ヘクタールを超え、全国の20%以上を占めるという。

 張氏は「この品種は通常の交雑育種技術を採用して選定・育成が行われ、中国で初めて鞘がはじけず、機械での収穫に適したゴマの品種となった。適応性が高く、西北、華北、黄淮、江淮の一部の生産エリアでの栽培に適している」と述べた。

 約13ヘクタールの畑でゴマを栽培する宋勇権さんは「以前はゴマの収穫の人件費が1ムーあたり400元(1元=約21円)くらいかかっていたが、今の機械収穫だと80元で済む。この品種の1ムー当たり生産量は100キロを超え、機械収穫での損失率は約3%で、手作業による収穫より低い」と述べた。

 
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