中国各地では現在、秋の就職フェアが集中的に開催されている。今秋の就職活動シーズンでは「AI面接官」が登場し、多くの求職者に対応している。人民日報海外版が伝えた。
「AI面接官」とは、面接を担当するバーチャルヒューマンのことだ。自然言語処理や感情分析、表情認識といった先端技術が駆使されており、求職者の回答や動作などを分析し、求人職種に適した人材かどうかを評価する。最近では「AI面接官」の大量活用が採用面接における新たなトレンドとなっている。
就活中の大学生である楊楊さんは、AI面接官が担当する面接をすでに3回受けた。最近受けた中国郵儲銀行の面接では、「AI面接官」に勉強や実習の経験について質問されたという。
楊さんは「面接では6つの質問があり、回答の制限時間は質問1つ当たり3分。面接はすぐに終わった。従来の面接と比べると、AI面接はスマホで面接を受けることができて時間の節約になり、効率がいい」と話した。
楊さんのように、「AI面接官」の面接を受けたという求職者は少なくない。市場調査会社・艾瑞諮詢(iResearch)が発表した「2023年中国オンライン求人市場発展研究報告」によると、面接でAI動画が使われている割合は31.8%に達している。企業千社以上と大学生数千人を対象として、求人サイト「牛客網」が実施した今春の大学生求人に関する調査によると、調査に回答した大学生の半分以上がAI面接の案内を「受け取ったことがある」と答えた。
調査によると「従来の面接よりAI面接のほうが客観的」と感じている求職者が少なくなかった。ある回答者は「人間の面接官は好みやその時の状態が面接結果に影響する可能性がある。AIの評価は標準化され、可視化されており、人為的な要素の影響を受けにくく、求職者は自分の実力をアピールすることに集中しやすい」と語った。
ただ、「AI面接官」とはやり取りしにくいと感じている求職者もいる。ロボットが発する温かみのない声や、目を合わせての会話がない状況に加え、制限時間になると回答を必ず終了しなければならず、一部の求職者はかなり戸惑っているようだ。そのため、複数の大学ではAI面接を念頭に置いたシミュレーションを導入し、就職を予定する学生が「AI面接官」との対話に慣れるようサポートしている。
企業側から見ると、「AI面接官」を導入することで、広い範囲の地域に住む学生を対象にして大規模な面接できるため、雇用元の間ではAI面接の採用がますます広がっている。
中国移動通信集団江蘇有限公司のヒューマンリソース関連専門家である龐瑶氏は「例えば、人間の面接官なら10人で5日かかる大学生面接が、AI面接なら2日もかからない」という。「AI面接官」は、企業のヒューマンリソース部門の仕事量を効果的に減らし、効率向上とともに求人コスト削減を実現している。
中国科学院自動化研究所の王金橋研究員は「現在、AI面接は主に一部の基礎的な職種の面接に応用されている。作業が複雑であったり、複雑なコミュニケーションが必要であったり、または採用基準をデータ化するのが難しい職種には適していない」と指摘した。
業界関係者は「知的円熟度や人格的魅力といった『ソフトパワー』を評価する面では、AI面接はまだ能力が低い。また、アートや人的・文化的分野といった、感情の理解やクリエイティブな表現が必要な分野にはあまり適さない」と説明した。
関連調査によると、AI面接は主に1回目の面接に採用されている。また、企業側でも、AIによる面接を導入すると同時に、スタッフによる再面接やランダムなチェックも行っている。
AI面接では必然的に求職者の個人情報を収集することになり、個人情報の保護が求職者の関心の的となっていることは注目すべき点だ。業界関係者によると「生成AIサービス管理暫定弁法」では、AI面接関連製品は届け出を行い、産出したデータは通常、公共のクラウドプラットフォームや企業が運営するクラウドプラットフォーム上に保存するか、企業のローカルストレージに保存しなければならないと定めている。また、データの保存と送信にはパスワードを設定し、アクセス制限を設けて、全ての操作を追跡できるようにしなければならないという。