2025年01月06日-01月10日
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中国農業科学院の研究者ら、害虫の薬剤耐性メカニズムを解明

2025年01月09日

 中国農業科学院深圳農業ゲノム研究所の研究者が、害虫の体内には農薬の薬剤耐性と直接関係する特殊なタンパク質があることを明らかにした。研究では、昆虫の体内においてこのタンパク質が脂質の輸送や農薬排出に関与する全過程を解明し、新型農薬の開発や薬剤耐性の問題を解決する新たなアプローチを切り開いている。関連研究成果はこのほど、国際的学術誌「セル」にオンライン掲載された。新華社が伝えた。

 現在、害虫の薬剤耐性の問題が深刻化しており、世界の食糧供給安全を脅かしている。環境に優しく薬剤耐性が低いグリーン農薬の開発は、農薬産業における発展の方向性となっている。論文の責任著者である中国農業科学院深圳農業ゲノム研究所の楊青教授は「グリーン農薬の開発で鍵になるのは、人と家畜にとって安全なグリーン農薬分子標的を探すことだ。これは害虫を射撃するようなもので、害虫を一撃で死に至らしめる『的』を探す必要がある」と説明した。

 楊氏のチームはこの「的」を探す過程において、昆虫の体内に輸送機能を持つタンパク質があることを発見した。昆虫とその他の節足動物にのみ存在し、人類や脊椎動物、植物には存在しないため、農薬分子標的として適している。

 研究チームは害虫コクヌストモドキを実験対象として、この輸送タンパク質が昆虫の体内でタンパク質を輸送し農薬を排出する全過程を解析した。楊氏は「このタンパク質輸送機能を阻害できれば、害虫の表皮の防護バリアと解毒メカニズムを無効化できる」と指摘。これを踏まえ、チームはこのタンパク質輸送を阻害できる低分子阻害剤を発見した。

 楊氏は「研究チームはグリーン農薬の開発を急ぎ、製薬コストを削減し、研究成果の産業化を推進する努力を続ける」と強調した。

 研究は中国農業科学院深圳農業ゲノム研究所や、植物病虫害総合管理全国重点実験室などの機関が共同で実施した。

 
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