中国北京市はこのほど、エンボディドAIに関する3年行動計画を発表し、1千億元(1元=約20.4円)級の産業クラスターの立ち上げを目指すことを明らかにした。また、浙江省や広東省などもエンボディドAIや人型ロボット産業をサポートする関連政策や計画を打ち出している。新華網が伝えた。
北京市政府新聞弁公室は2月28日に開いた特別記者会見で、「2027年末を目途に、北京市は100件以上のキーテクノロジーのブレイクスルーを果たし、世界をリードするソフトウェア・ハードウェアを少なくとも10件生み出す。また、1万台のエンボディドAIの応用を促進し、1千億元級の産業クラスターを立ち上げることを目指す」と明らかにした。
会見で発表された「北京エンボディドAIテクノロジーイノベーション・産業育成行動計画(2025-27年)」によると、北京市は技術革新、プラットフォームの下支え、シーンの牽引、エコシステムの最適化という4つの観点から、エンボディドAIの分野の技術革新と産業発展を促進する計画だ。
浙江省は2024年9月に「浙江省人型ロボット産業革新的発展実施案(2024-27年)」を発表し、省全域の人型ロボット産業の革新的発展を加速させる計画を策定した。同省は今年の政府活動報告で、「未来産業の建設を計画し、『AI+』を着実に実施し、人型ロボットや量子情報、脳型知能、合成生物学、上空・宇宙情報、低空経済(低空域飛行活動による経済形態)という新産業や新業態の展開を加速させ、将来の競争における優位性を確保する」という目標を掲げた。
広東省は今年2月に発表した「広東省現代化産業体系構築2025年行動計画」で、「人型ロボットを含むエンボディドAIを大々的に発展させ、ロボットの脳、手足、ボディ、重要部品などのブレイクスルーを加速させ、スマートロボットの応用シーンのイノベーションを積極的に促進する」ことを打ち出し、「ハイレベルの省エンボディドAIイノベーションセンターを建設し、ユニコーン企業やテクノロジー型リーディングカンパニーを3~5社誘致・育成する」との目標に掲げた。
大まかな統計によると、北京市や上海市、広東省、浙江省、山東省、重慶市を含む10以上の省・市が、エンボディドAI・人型ロボット産業の発展をサポートする政策を発表しており、それらが質の高い経済発展や産業の高度化を促すと見ている。
北京市科学技術委員会、中関村管理委員会の劉衛華副主任は、「汎用AIを実現する重要なルートの一つであるエンボディドAIは、すでにテクノロジーをめぐる競争の新たな重要分野となり、未来産業における新たな競争の場として、経済発展の新たな牽引力となっている」との見方を示した。ロボットが春節(旧正月)のテレビ番組でダンスを披露してからは、ロボットが一般家庭に普及することへの期待が高まっている。ECプラットフォームで「人型ロボット」と検索すると、春節番組仕様の人型ロボットがすでに販売されていた。宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)が開発したこれらの人型ロボット2種類は、ショッピングサイト「京東」で、9万9000元と65万元で発売されたが、京東の自社運営ストアではすでに完売となっていた。また、「在庫あり」と表示されている店では、それよりも数万元高い価格で販売されていた。中古品プラットフォームでは、ロボットレンタルを取り扱うショップもあり、1日当たりのレンタル料金は千元から1万元まで幅がある。
北京交通大学中国先端製造業研究センターの朱明皓執行主任は「昨年から優必選(ubtech)や宇樹科技、星動紀元(Robot Era)などの人型ロボット企業が頭角を現し、人型ロボットが発展の波に乗っている。新たな応用シーンが生み出され、モデルケースが登場するにつれて、人型ロボットは製造業や医療、物流、消費などの分野で応用されていく。特に製造業との結びつきにより、人型ロボットのアップデートが加速し、成熟するだろう」との見通しを述べた。