中国国家発展・改革委員会や国家エネルギー局などの4部門はこのほど、V2G(EVから電力網への送電)大規模試行都市・プロジェクトを発表した。上海、常州、広州などの9都市と、北京の新型エネルギー貯蔵に基づくV2G協調制御試行事業などのプロジェクト30件が含まれる。科技日報が伝えた。
V2Gは簡単に言えば、新エネルギー車を「モバイルバッテリー」に変え、電力網に電力を送電するものだ。双方向充放電(V2G)技術により、新エネルギー車は電力需要が少ない時間帯に充電し、電力需要のピーク時にはバッテリーの電力を電力網に逆供給し、電力を支援する。
公安部(省)が今年1月に発表したデータによると、中国の新エネルギー車保有台数は2024年末現在で3140万台だった。新エネルギー車による無秩序な大規模充電が電力システムの需給バランスに深刻な圧力をもたらす可能性があり、V2Gの大規模普及の必要性が一層顕著になっている。
広東省広州市の南沙環市西路多元スーパー充電スタンドで3月28日、1台の電気自動車(EV)がV2Gに参加した。充電ロボットが自動で識別・充電・決済を行い、80秒以内に全プロセスを完了した。
深圳市坪山区の馬巒山郊野公園充電スタンドでは、比亜迪(BYD)の電気大型トラックが初めて電力網への逆送電に参加した。統計によると、大型トラック1台当たりの持続的な放電量は300キロワット時(kWh)に達する。これは30世帯以上の1日分の電力消費量、もしくは1万5000台の携帯電話をフル充電できる量に相当する。
これらは南方電網公司による中国初の省・自治区間連携によるV2G実証イベントのワンシーンだ。今回のイベントは広東省、広西チワン族自治区、雲南省、貴州省の63都市をカバー。V2G電力量は50万kWh以上で、10万台以上の新エネルギー車が参加し、中国最大規模のV2Gとなった。深圳市の蓮花山スーパー充電スタンドでの最大放電電力が1052kWに達するなど、中国国内で初めて、1日当たりのV2G逆送電量が1万kWhを突破した。
南方電網公司の李敏虹マーケットディレクターは「イベントでは50万kWhの新エネルギー電力の逆供給を促進した。これは5万世帯の1日の電力消費量に相当し、自動車のオーナーは40万元(1元=約19円)以上の収益を得た」と説明した。
国家発展・改革委員会弁公庁のV2G大規模応用試行事業に関する通知は、V2Gプロジェクトを主体として、先進的で普及可能なビジネスモデルを模索し、市場化メカニズムによるV2G大規模発展を誘導するとしている。
これを受けて、一部の企業や機関が行動を開始している。今回選ばれたプロジェクトの一つ、「自動車+電力」デュアルチェーン協同V2G「都市レベルモデル」試行事業プロジェクトは広州電力供給局と広汽集団が中心となっており、広汽集団はすでにV2Gの機能を搭載した6モデルを発売しており、販売台数が3万台を超えている。
広州市工業・情報化局の王玉印副局長は「広州は関連政策を検討・制定し、現地の自動車メーカーがV2Gモデルの研究開発と販売を強化することを奨励しており、電力充電・貯蔵・放電のネットワークを模索・構築し、V2G設備利用者やアグリゲーターによる仮想発電所の構築・運営への参加を推進する」と述べた。
「頻繁な充放電はバッテリーの老化を加速させる。充電による補助金が劣化による損失を補填できない場合、オーナーは充放電に参加したいと思うだろうか。また、バッテリー寿命をどうやって持続的にモニタリングするだろうか」。華南理工大学電力学院の陳皓勇教授は、オーナーの参加意欲に影響を及ぼす一連の問題を列挙した。
自動車メーカーや充電ポール運営者などの積極性もまだ十分とは言えない。大多数の新エネルギー車はまだ電力網への逆送電に対応しておらず、V2Gに対応する充電ポールの数も非常に少ない。
陳氏は「まず利用者や自動車メーカーなど参加者の習慣や意識を転換する必要がある。より重要なのは、V2Gの充放電やバッテリーの寿命・安全などの重要コア技術の研究開発、バッテリー管理技術の高度化を急ぐ必要がある」と述べた。