2024年08月13日-08月16日
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新エネ車からの「逆充電」、商用化始まる

2024年08月16日

 中国江蘇省無錫市のV2G(EVから電力網への送電)実証エリアで、1台の新エネルギー車が充電ポールのついた駐車スペースに停められていた。オーナーの祖瑞さんが充電コネクタを接続し、2次元バーコードをスキャンすると、画面には新エネ車バッテリーのパラメータが表示され、「放電」インジケータが点滅した。人民日報が伝えた。

 この新エネ車が充電ポール付き駐車スペースに来たのは、充電をするためではなく、電気自動車から電力網に「逆充電」をするためだった。同車は約30分にわたり計18.5キロワット時(kWh)の逆充電を行った。

 祖さんはネット配車サービスのドライバーで、最近よく「放電」を促すメッセージを受け取っていたという。「とても斬新で、しかもキャンペーンに参加すれば還元メリットもあるので、試しに来た」と祖さん。今回の送電網への逆充電で、システムから55.5kWhの電力が祖さんの充電アカウントに還元された。還元分はいつでも充電ポールで自分の車に充電できるので「1回の逆充電で得た分は1日分の電気代に相当し、大きな節約になる」と語った。

 同エリアはこのほど、商用化を開始した。新エネ車が充電ポールを使って電力網と双方向で充放電を行うこととなり、従来の単一的な電気の流れが変わり、新エネ車が電力網の「モバイルバッテリー」になった。現在まで1200台以上の新エネ車がこれに参加し、累計2万4000kWh以上を逆充電している。

 中国の国家発展・改革委員会や国家エネルギー局、工業・情報化部(省)などの部門は今年1月、「新エネ車と電力網の融合インタラクションの強化に関する実施意見」を発表した。長江デルタ、珠江デルタ、京津冀(北京・天津・河北)、山東、四川・重慶など、条件が成熟している地域でV2Gの大規模実証実験を実施し、2025年末までに5都市以上で50件以上の双方向充放電実証プロジェクトの完成を目指している。

 国網無錫電動汽車服務有限公司の謝照軍董事長は「新エネ車は充放電設備により、公共電力網やマイクログリッドなどの電力供給システム、またはビル・住宅などの配電システムと結びついた。動力電池を『動くエネルギー貯蔵装置』として電力網の一部に組み入れ、電気自動車と電力網の間のエネルギー・情報の流れの双方向のインタラクションを実現する」と述べた。

 毎年、電力消費ピーク期になると、多くの都市が電力不足や電力供給逼迫の問題に直面し、電力資源のエリアを跨いだ調節が必要になることが多い。新エネ車は優れたエネルギー貯蔵装置に相当し、それらを調整して電力網に送ることができれば、幅広い可能性が広がる。

 では、新エネ車の放電の可能性はどの程度なのだろうか。無錫V2G検証拠点や無錫新呉区公共交通分公司路線バス停、無錫広盈集団事務パーク、無錫宜興市白塔村駐車場でこのほど、10ブランドの新エネ車59台による電力網への集中的な逆充電が行われた。1台の新エネ路線バスを除き、他の車両は平均30分間の逆充電を行い、最大出力は2100キロワット(kW)に達した。ピークカット量は3150kWhで、夏場の400世帯以上の1日の電力消費量を満たした。

 現地のV2Gキャンペーンは招待制で、主に微信グループや特定の携帯アプリでユーザーを募集している。国網無錫電力供給公司の劉航氏は「現段階の逆充電量は電力網の一時的な対応ニーズに用いられ、いつでもできるわけではない。V2Gの逆充電量と時間帯についてはまだ調整中だ。リアルタイムの電気料金と電力網の需要に基づき、ユーザーが24時間逆充電できるようになることで、V2Gの持続可能なビジネスモデルが改善される」と語った。

 
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