2025年06月16日-06月20日
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産業への応用が進展する中国の「AI+」

2025年06月18日

 中国の政府活動報告に「AI+」が2年連続で盛り込まれたことで、さまざまな産業でAIの応用が進んでいる。工場や店舗、学校の教室などに浸透しはじめており、こうした動きが外資系金融機関の注目を集めている。中国新聞網が伝えた。

 広西柳州鋼鉄集団の冷間圧延工場では、AIデジタルアシスタント「釘釘(DingTalk)」を基盤としたスマートインタラクションプラットフォームが構築され、製造ライン全体が「透明なガラスの部屋」のように可視化された。従業員はスマートフォンを使って、生産の進捗やコスト、設備の状態などをリアルタイムで確認できる。

 同工場の技術専門家である陶歆氏によると、酸洗圧延ラインでは厚さ4ミリの帯鋼を1.5ミリの薄鋼板に加工するまでに10以上の工程が必要で、関連するパラメータも100項目以上に上るため、以前は正確な製造コストの算出が難しかったという。しかし現在では「スマート鋼材AIアシスタント」により、鋼板を加工する際の製造コストが正確に把握できるようになった。

 字節跳動(バイトダンス)傘下の「火山引擎(Volcano Engine)」が主催した「Force原動力大会」では、AI大規模モデル「豆包大模型1.6」と動画生成モデル「Seedance 1.0 pro」が公開された。バイトダンスの梁汝波CEO(最高経営責任者)は「長期的な投資を継続し、スマート面でのブレイクスルーを追求し、産業への応用に注力する」と表明した。

「豆包大模型」はすでにマルチモーダル、映像、画像、音声、音楽などのAIモデルカテゴリーをカバーしており、スマート性能の向上と応用展開を加速させている。世界のスマートフォン大手10社のうち9社、大手自動車ブランドの8割、重要な金融機関の70%がサービスを導入している。

 エネルギー、金融、交通、医療、教育、農業など、中国ではAI技術を積極的に導入する業界が増えている。こうした発展の勢いは、外資系金融機関による中国ハイテク株への評価にも影響を与えている。

 ドイツ銀行プライベートバンキング部門アジア投資戦略主管の劉佳氏は、「中国ハイテク株は中長期的な投資先として有望だ」とした上で、「米国ではAI関連株が広まってからすでに4年近く経つが、中国ではまだ4カ月ほどしか経っていない」と指摘した。

 劉氏によると、2025年は株式投資市場が「中国AI」というテーマに注目する「元年」となったが、このテーマは今後も持続的に推進されていくという。政策面や商用展開の面で、中国におけるAIの発展は非常に速く、各業界で最近新たに競争が繰り広げられるようになった分野はいずれもAIと関連している。テクノロジー・プラットフォーム主要各社が今年、AIインフラへの大規模投資を次々と発表していることも、中国ハイテク株が中長期的な成長ポテンシャルを維持する上で重要な要因の一つとなる。

 UBSウェルスマネジメント投資ディレクター室・マクロストラテジストの李慧琪氏は、すでに中国ハイテク株の評価を「ポジティブ」に引き上げたという。年初に「DeepSeek(ディープシーク)」が登場したことによって、中国のAI発展に対する市場の見方は新たな段階に入った。現在、中国のハイテク株のバリュエーションは依然として過去の平均を下回っており、予想される20~30%の利益成長がまだ株価に反映されていない状況である。

 モルガン・スタンレーが最近発表した中国のAIに関する最新レポートでは、AIの価値がハードウェアから応用レベルへと移行しつつあると示されている。今後のAI発展には新たなAIツールを迅速に開発・導入できるような広範なエコシステムの整備が重要であり、こうした環境の整備が発展の鍵になると指摘している。

 
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