中国初の第4世代高エネルギーシンクロトロン放射光源「HEPS」の第1期工事が年内に完了し、受け入れ基準を満たしたうえで試験運転を開始する予定であることがこのほど、中国科学院高エネルギー物理研究所への取材で分かった。新華社が伝えた。
高輝度という特性により、シンクロトロン放射光源は通常の光源では対応できない研究に利用される。北京市懐柔区の雁栖湖のほとりに建設中のHEPSは、完成後には「地球上で最も明るい光」を発する装置となり、ナノプローブ、非弾性散乱、コヒーレント回折、超高速時間分解など先端的な実験技術を多数提供する。
HEPSは最大300keVの高エネルギーX線を活用することで、物質の微細構造およびその変化メカニズムをリアルタイムかつ実際の作業環境下で解析できる。これにより、高感度、高精度、高速で複雑な条件に対応し、より現実に近い科学研究が可能となる。
高エネルギーシンクロトロン放射光源プロジェクト総指揮の潘衛民氏は、「HEPSは2019年の建設開始以来、加速器とビームラインステーションの整備はほぼ完了した。これまでに複数回のビーム調整が行われ、15本のビームライン全てが光を出した。装置チームは開発した最先端の方法を利用して加速器のビーム調整を進め、ナノ集光ミラーなどの重要な光調整問題を解決した。加速器・挿入装置・ビームライン・実験ステーションの全工程で協調的な調整を実現し、ビームエミッタンスや光学調整技術でも良好な進展が得られている」と説明した。
HEPSは最大90本のビームライン設置が可能だ。大型装置の能力を速やかに発揮させるため、チームはビームラインの建設計画も推進している。各レベルの支援を受けながら、多様な資金調達モデルを積極的に模索し、科学研究ユーザーや企業ユーザーと深く協力してビームラインの継続的な建設を進めており、「第15次五カ年計画」期間中(2026-30年)には45本にまで増設し、各分野の最先端基礎研究と産業研究開発をより強力に支援するとしている。
シンクロトロン放射光源は、先進機能材料、エネルギー・環境、生命科学・医療分野において不可欠な微視的観察手段を提供する装置であり、世界では「最先端科学研究の目」として認識されている。
中国では、北京シンクロトロン放射施設(BSRF)(第1世代)のほか、安徽省合肥市に第2世代光源、上海・張江に第3世代光源が建設されている。
これら3世代のシンクロトロン放射光源は、結晶やセラミックスなどの材料の構造解析や欠陥研究といった材料科学分野をはじめ、半導体、超伝導体、ナノ材料などの新素材の開発、さらに構造生物学や生体高分子の機能解析、医薬品開発などの生命科学研究にも活用されている。これにより、関連分野の研究に高分解能の生体分子構造情報を提供し、タンパク質や核酸などの構造と機能の理解を深め、新薬開発や遺伝子工学の進展にも貢献してきた。
第4世代光源が持つ高輝度・高コヒーレンスという特性は、新たな実験技術との融合によって、高温超伝導や新エネルギー固体電池など戦略的先端分野の研究を強力に後押しするとともに、微細構造解析の精度と効率を高め、新材料開発や新薬スクリーニングなど産業分野での応用にもつながっている。
HEPSプロジェクト常務副総指揮の董宇輝氏は、「HEPSが持つ第4世代光源としてのポテンシャルを十分に発揮するため、高エネルギーシンクロトロン放射光源チームは、検収基準の達成を目指しながら、各分野の研究機関や企業ユーザーと密接な連携を図っている。すでに初回実験プランや各分野の重要な研究ニーズを募集しており、それらに基づいて装置の連携調整を進め、科学的ニーズに基づいた建設方針の確立を急いでいる。また、分野別のユーザーワークショップも複数回開催しており、できるだけ早期に、かつ質の高い研究成果を生み出すことを目指している。あわせて、国際協力の推進や、ユーザーに配慮した利用環境の整備にも取り組んでいる」と説明した。

(画像提供:人民網)