青蔵高原(チベット高原)には世界で最も多いとされる高原湖沼群が広がっており、「世界の屋根」「地球の第三極」「アジアの給水塔」と呼ばれている。その湖沼の変化やメカニズム研究は世界で注目を集めている。中国新聞網が伝えた。
中国科学院を拠点に設立された「持続可能な開発ビッグデータ国際研究センター」の廖静娟研究員のチームは、国際衛星8基の観測データを統合し、青蔵高原の面積10平方キロ以上の湖沼361カ所について体系的モニタリングを実施。2002年から21年までの青蔵高原湖沼の水位変化データセットを完成させ、公開した。
今回の研究では、欧州の環境衛星「Envisat」や米国の「ICESat-1」(氷・雲・陸地の高度測定衛星)など国際衛星8基の観測データを統合することで、湖沼水位モニタリングの精度を大幅に向上させ、「アジアの給水塔」の水循環メカニズム解明に重要なデータ支援を提供する。
今回公開された湖沼361カ所のデータセットのうち、181カ所は2002年から21年までの連続20年間の水位時系列を含み、残る180カ所は2010年から21年までの水位時系列を持つ。このデータセットは実地観測値と高い一致を示し、8カ所の検証点における中央値の二乗平均平方根誤差はわずか0.19メートルとなる。また、国際的な主流衛星高度測定製品と比べても、誤差はすべて0.30メートル未満で、国際的な先進レベルに達している。
廖氏は「2002年から21年までの青蔵高原湖沼の水位変化データセットを用いることで、湖沼の水量変化を正確に算出できるようになり、長期的な水位変化傾向の分析が可能になる。湖沼の氾濫や洪水災害といった短期的な警戒警報に役立つほか、湖沼生態系と水資源変化の内部的なつながりの解明を可能にする」と語った。
さらに「今回の研究はチベット高原湖沼の体系的モニタリングにおけるデータの空白を埋めるだけでなく、世界第三極の環境研究に新たな技術パラダイムを提供し、「アジアの水塔」の水循環過程と、それが地球規模の気候変動にどのように反応するのかを理解する上で重要な意義を持つ」と述べた。
同データセットはこのほど、学術誌「地球システム科学データ(Earth System Science Data)」に掲載され、地球・環境科学データ公開プラットフォーム「PANGAEA」を通じて公開された。

写真は青蔵高原湖沼水位の時空間変化分布図。(画像提供:人民網)