中国の第15回全国運動会の開会式が9日、広東オリンピックセンターで開催された。会場には世界初の「人型ロボット開会ゲスト」が登場し、夜空を切り裂くような青銅の響きとともに、3台の完全自律型エンボディドAI人型ロボット「Walker S2」が、広州・南越王墓から出土した「文帝九年」(紀元前129年)の青銅製打楽器「句鑃(くちょう)」を打ち鳴らし、2000年の時を超えた共鳴の音色を奏でた。科技日報が伝えた。
中国の国家レベルの総合競技大会で、人型ロボットが開会ゲストとして登場するのは初めてで、人型ロボットが1000年前の青銅礼楽を奏でるのも初めてとなった。この創造性あふれる取り組みは、中国文明の悠久の遺産と人型ロボット技術を融合させたもので、「過去の文明」と「未来の科学技術」が同じ舞台で響き合う瞬間を実現した。
青銅句鑃は古代の礼楽文化の重要な担い手で、澄んだ音色と古風なリズムを持ち、演奏には打撃位置や強度を精密に制御する必要があり、人間の演奏家にとっても難易度が高い。これを演奏した「Walker S2」は、深圳市優必選科技が開発したもので、身長176センチメートル、体重70キログラム、全身に52の自由度を備える。世界初の人型ロボット用ホットスワップ式自動バッテリー交換システムを搭載し、3分間で自律的にバッテリーを交換できる。
優必選の最高ブランド責任者(CBO)である譚旻氏は、「青銅句鑃は全部で8点あり、3台のロボットはそれぞれ異なる位置で正確に打撃するだけでなく、青銅特有の震えるような響きを奏でるには、分業・協調能力を高めなければならない。工場での物品運搬とは全く異なる任務だ」と説明した。
開会式で「Walker S2」は数々の高度な技術を見事に披露した。譚氏は、「演奏では、全身の力と位置の混合制御技術と高精度ビジョン認識システムを組み合わせ、±2ミリメートルの打撃位置精度と10ミリ秒以内の動作同期を実現した。これにより、人間の演奏家にも匹敵する安定した力加減で、それぞれの句鑃が持つ独特の音色を正確に自律的に引き出した」と述べた。
多人数がいる大規模な舞台で、ロボットが正確に位置を把握するために、「Walker S2」が使用した多センサー融合ナビゲーションシステムが重要な役割を果たした。360度全方位の視覚カバーとインテリジェントナビゲーションアルゴリズムにより、人が行き交い、光が変化する動的なシーンでも、±5センチメートルの高精度で自分の位置を保ち、迷うことがないという。
譚氏は、「新たな科学技術革命が加速する中、人型ロボットは『第15次五カ年計画』(2026~30年)における質の高い発展と高水準の科学技術自立の重要な力となりつつある。今後もコア技術のブレイクスルーを続け、人型ロボットを新たな質の生産力として工業化を後押ししていく」と語った。

(画像提供:人民網)