中国科学院大気物理研究所の研究チームが、火星大気循環モデル「GoMars(Global Open Planetary Atmospheric Model for Mars)」を開発し、このモデルを用いて火星の砂塵循環を体系的にシミュレーションした。中央テレビニュースが伝えた。
研究では、砂塵循環のさまざまな時間スケールにおける変動を解析し、特に再現が難しいとされる年際変動のシミュレーションにも成功した。年際変動は火星大気モデルの主要な課題の一つであり、今回の成果は将来の火星気象予報や気候予測の基盤になるという。関連結果は学術誌「大気科学進展(Advances in Atmospheric Sciences)」に掲載された。
中国では「天問1号」に続き、「天問3号」のサンプルリターン計画が進むなど、火星探査の取り組みが拡大している。それに伴い、火星の大気環境、特に砂塵循環に関する理解の重要性が高まり、独自の数値モデルの必要性が指摘されてきた。こうした背景から、国産モデル「GoMars」の開発が進められた。
研究チームは境界層での砂塵の乱流混合過程をモデルに導入し、地表から砂塵がどの程度巻き上がるかについて観測や理論に基づく条件を設定したうえで、約50火星年(1火星年は地球の約2年)にわたる砂塵循環をシミュレーションした。砂塵の巻き上げ(塵旋風や風応力)、輸送、沈降といった過程をモデル内で扱い、砂塵循環の多様な時間スケールの変動を分析した。
さらにGoMarsは、全球ダストストーム(GDS)の発生時期・発生場所・輸送経路を再現し、特定の火星年の観測記録に近い結果を示した。不規則なGDSの発生間隔や、砂塵と大気の相互作用に伴う年際変動もモデル内で再現された。
研究チームは今後、より観測値に近い地表条件をモデルに導入し、砂塵循環の年際変動を引き起こす要因を詳しく調べる予定だ。また、火星の水循環プロセスをモデルに組み込み、砂塵循環との相互作用を検討するとしている。さらに、GoMars専用のデータ同化システムを構築し、「天問3号」の観測データを活用した火星気象のリアルタイム予測の実現を目指すという。