アワノメイガは、トウモロコシを食い荒らす害虫だ。この昆虫の頭部は非常に硬く、摂食の際には硬いトウモロコシの茎を何度も貫通し、繰り返し衝撃を受けても損傷しないことが確認されている。中国農業科学院深圳農業ゲノム研究所の梁翔禹氏のチームは、この頭部構造に着目し、大連理工大学と共同で、耐衝撃性に優れたハイドロゲルを開発した。これにより、ドローンなどの機器が衝突環境下で使用される際の信頼性の向上につながるという。関連成果はこのほど、国際学術誌「Advanced Materials」に掲載された。光明日報が伝えた。
研究チームによると、自然界では多くの生物が、生体組織だけで形成された精巧な多階層構造によって高い力学的特性を実現しており、昆虫の表皮はその代表例である。チームはアワノメイガの頭殻内層表皮のタンパク質組成を詳細に解析し、その高い耐衝撃性が独特の層状構造に由来することを明らかにした。この構造は、局所的に加わる衝撃を迅速に分散・緩和する働きをもつという。この知見をもとに、研究チームはアワノメイガ幼虫の頭殻構造を模倣し、同様の生体模倣層状構造をもつハイドロゲルを実験室で作製することに成功した。試験の結果、この生体模倣ハイドロゲルの耐衝撃靭性は2万3534 J/㎡に達し、従来のタンパク質系またはキチン系ハイドロゲルと比べて1000倍以上高い値を示した。
研究チームは実際の効果を検証するため、このハイドロゲルを農業害虫監視用ドローンの衝突防止用ブラケットに装着し、果樹園を模した複雑な通路環境で試験を行った。その結果、ハイドロゲルを装着したドローンは複数回衝突しても一時的に揺れただけで、すぐに安定飛行を回復し、機体に損傷は認められなかった。一方、装着していないドローンは衝突後に制御を失って墜落し、ブラケットも損傷した。
専門家は、この研究が次世代のバイオミメティクス材料の設計・製造に新たな知見を与えるものであり、スマート農機やソフトロボット、ウェアラブルデバイス、精密センサーの保護などへの応用が期待されるとしている。