第23号:スポーツ科学、中国の挑戦~北京五輪によせて~
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私は中国のここが好き!〜筆者が語る中国の美点〜

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( 2008年8月20日発行)

私は中国のここが好き!
〜筆者が語る中国の美点〜

今井 寛
(中国総合研究センター参事役)
 私は中国のここが好き!

 ・・・と、前回中国人による「私は日本のここが好き!」をテーマとして取り上げたので、今回はその逆をとトライしてみたのだが、これが意外と難しい。「自分が好きな中国」に ついて想いを巡らすと万感胸に迫るものがある。とても一言では表現できない。
楽しい思い出もあるが、やっぱり「○○でトラブった」とか「戒厳令を体験した」などというエピソードが浮かんでくる。前回紹介した「日本の好きな点」について語ってくれた外国の方々も、実 は胸中去来する思いがあったのではなかろうか。
中国と二十年間も付き合ってきたくらいだから嫌中派ではないし、そうかと言って中国四千年や現在の驚異的発展に惹かれている訳でもない。
では、自分は中国のどこに魅力を感じてきたのだろうか。

 人と社会の意外性を体験

 日本人と中国人は外見が似ている。アジア人の中でも、髪の色や皮膚の色、背格好などは似ている方だと思う。
ところが、内面的な考え方や行動や価値観などに目を移すと、意外と違う。白人や黒人など風貌が似てないと「だから考え方も違うんだ」と納得しやすいが、中国人とは見た目が似ているだけに、か えって意識の違いを新鮮に感じてしまう。

 例えば、交渉事やクレームを付けるケース。中国人の場合は日常生活でも仕事でも、とにかく自己主張をする。口だけでなく激しく態度でも示す。一方日本人の場合は、少 なくとも表面上はできるだけ摩擦を避けようとすることが普通である。
中国の場合特にすごいと思うのは、がんがんとやり合うことが、比較的後に尾をひかないことである。顔を立てることは必要だが、
「反対意見を述べること」=「人格の否定」
という風にはとらえられない。交渉は交渉、人は人と、分けて考える傾向が強い(慣れればスポーツ感覚に近くなる)

 あと中国の方が
「人が中心となって仕事をやっている」
という雰囲気がある。まず仕事ありきで仕事に人がくっついてくるということではなく、主役はあくまで人である。人が存在した上で、その人が取り組む仕事がある。
これが悪い方へ転がると、システムや体制ではなく人治で決まってしまうので先行き不透明なリスクもあるが、日本人的には「この流れだと実現はまず無理」なことでも、結 果として中国側の関係者の決断により好転するケースもある。とにかく意外性がある。

 このような話は実際の体験がないとニュアンスを伝えるのが難しいかと思っていたところ、参考になるコラムを見つけたので紹介しておこう。

岩城真 中国調達:想定外の中国国有企業駐在経験

  コラムの紹介文によると、岩城氏は大手機械メーカー購買部門の中国調達実務責任者として中国の製造業の現場を飛び回る現役バイヤーである。中国企業の工場 内での中国人エンジニアやマネージャーとのやりとりの中で、彼らが仕事と食事においてON・OFFの切り替えが楽々できることや、最初は仕事のやり方を 巡ってぎくしゃくしていたのが、互 いにぶつかり合う中で一人の人間としての理解を少しずつ深めていく様子が、生き生きと描かれている。

 一見似ているのに違う

 日本人と中国人のように「一見似ているのに違う」人々と知り合い交流することは、自分自身について知ることになる。ひいては人という存在の不思議さにも思いを巡らすことにもなり、と にかく新鮮で刺激的な体験なのである。

<参考>

「岩城真「中国調達:想定外の中国国有企業駐在経験(5)」(2008年7月15日)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2008&d=0715&f=column_0715_005.shtml
(サーチナ http://searchina.ne.jp/