特集巻頭言:宇宙科学~中国有人宇宙船「神舟7号」打上げに寄せて~
中国科学技術月報2008年9月号(第24号) 2008.9.20発行
~はじめに~
中国 は1970年4月に、国産ロケット「長征1型」で中国初の人工衛星「東方紅1号」の打ち上げに成功し、世 界で5番目に自力で人工衛星を打ち上げられる国に なった。以来、中国は数々の衛星打ち上げの研究と実験を積み重ね、宇宙空間技術分野において歴史的なブレークスルーを次々に成し遂げた。
03年 10月、中国初の有人宇宙飛行船「神舟5号」を打ち上げ、回収するのに成功した中国は、世界で米・ロ に次ぐ3番目の独自の有人宇宙飛行技術を保有する国に なった。中国はその後、05年10月に2回目の有人宇宙飛行船「神舟6号」、06年9月に宇宙育種衛星「実践8号」、07年10月に中国初の月探査機「嫦 娥1号」、08年4月に中国初のデータ中継衛星「天鏈1号」などの打ち上げを次々に成功させた。
当初 今年10月に予定されていた「『神舟7号』の打ち上げは、9月25日から30日の間で、日を選んで実施する」と の中国有人宇宙飛行プロジェクト指揮部の決 定を9月7日付新華社電が報じている。「神舟7号」では、3名の宇宙飛行士の初の船外活動が予定されており、その打ち上げと地球への帰還の成功及び中国独 自の宇宙開発の新たな成果が期待され、注目されている。
中国 総合研究センターでは、「神舟7号」打ち上げの直前というタイミングをとらえて、ま さに本プロジェクトに携わっている中国側の最高責任者である張柏楠・有 人宇宙飛行船システム総設計師、叶培建・「嫦娥1号」月 探査機総設計師の2人の先生及び日本の宇宙航空研究開発の中核的実施機関である独立行政法人宇宙航 空研究開発機構宇宙科学本部・槙野文命名誉教授、同国際部・辻野照久参事の特別寄稿により、9月号特集 「宇宙科学〜中国有人宇宙船『神舟7号』打上げに寄せて〜」を発行することになった。この機会に本特集号記事を執筆された専門家諸氏に衷心よりお礼を申し上げる。
本特集が中国の宇宙科学技術の研究開発の発展動向を知り、日中の宇宙協力の可能性を探る一助となることを期待している。
「宇宙飛行船「神舟」の 技術的成果と有人宇宙飛行の展望」
張 柏楠 (有人飛行船システム総設計師)
「嫦娥1号」に おける衛星技術の成果と宇宙探査の展望」
葉 培建(衛星「嫦娥1号」総設計師)
「日本と中国の宇宙観測」
槙野 文命 (独立行政法人宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部名誉教授)
「 中国の宇宙開発動向と日中宇宙協力の可能性 」
辻野 照久 (独立行政法人宇宙航空研究開発機構国際部参事)