宇宙飛行船「神舟」の技術的成果と有人宇宙飛行の展望
宇宙飛行船「神舟」の技術的成果と有人宇宙飛行の展望
(有人飛行船システム総設計師)
宇宙飛行は、宇宙飛行機器を利用して大気圏外および地球以外の天体の探査、開発および利用を行う活動であり、宇宙飛行活動に は、人工衛星の打ち上げ、有人宇宙飛行および深宇宙探査の3大分野がある。有 人宇宙飛行は世界のハイテクの中でも最も挑戦的な分野の1つである。中国は急 速に発展する人口最多の大国として、有人宇宙飛行の分野を展開する能力を有しており、人類の進歩のためにしかるべき貢献をしている。
1.有人宇宙飛行の主な技術分野
有人宇宙飛行の主な技術分野には有人宇宙往復輸送技術、有人長期飛行技術、有人宇宙サービス技術、有人深宇宙探査技術が含まれる。
有人宇宙往復輸送技術の開発目的は、人を経済的かつ手軽に大気圏外へ送り地面に帰還させることと、有人飛行の科学探査から開発利用への転化を一歩ずつ実現 することである。打ち上げあるいは上昇技術、帰 還と着陸技術、環境コントロールと生命保障技術、ランデブー・ドッキング技術、緊急救命技術について重点的 に取り組み、各システムを掌握するものである。
有人長期飛行技術の開発目的は、人の宇宙軌道における長期生存を保証することで、これは有人宇宙飛行・宇宙サービスや深宇宙探査の前提として必要である。 組み合わせ式機体の建造および管理技術、物 資リサイクルと補給技術、安全防護技術、健康保障技術について重点的に取り組み、各システムを掌握するものであ る。
有人宇宙サービス技術の開発目的は、宇宙における実験・観測・管理・輸送・補給・補修および組み立てなどのサービスを人に提供することにより人が宇宙にお いてしかるべき役割を発揮することであり、こ れは有人深宇宙探査に必須の技術的基礎でもある。船外活動技術、ロボットアーム技術、宇宙施設の補給と補修お よび建造技術、高効率な軌道変更技術について重点的に取り組み、各システムを掌握するものである。< /p>
有人深宇宙探査技術の開発目的は、人を地球から宇宙およびその他の天体の表面に送り、安全に地球に帰還させる技術で、目的は宇宙資源を探査・開発し、人類の活動および生存空間を広く開拓することである。
2.宇宙飛行船「神舟」の主な技術的成果と発展
中国の有人宇宙飛行第1期プロジェクトの核心部分は宇宙飛行船「神舟」を研究開発することであり、そこには主に4つの課題があった。すなわち、全 飛行期間において宇宙飛行士に必要な生活および作業条件を提供すること、宇宙飛行士がミッションを完了した後に地上への安全な帰還を保証すること、飛行行 程においてひとたび重大な故障が発生した場合には、そ の他のシステムの支持もしくは宇宙飛行士の関与によって、自主的に地上に帰還でき、なおかつ宇宙飛行 士の安全を保証できること、宇宙での科学技術実験のために必要な条件を提供することである。
13年の発展を経て、中国は有人宇宙飛行船の核心部分である技術面での課題を克服し、6機の宇宙飛行船「神舟」シリーズの研究開発を成功させ、飛行実験も 成し遂げて、ロシア(旧ソ連)・ア メリカに次いで3番目に有人宇宙飛行技術を独力で開発した国家となった。「神舟」シリーズの研究開発は有人宇宙飛行の発 展需要と我が国の国情を十分に分析した基礎の上で、宇宙ステーションを目標とし、有 人宇宙飛行船を出発点とすることを明確にした戦略のもとに開始された。 旧ソ連やアメリカのように1人乗りテスト飛行船から着手し、2人乗り飛行船の検証を経てから、3 人乗り輸送飛行船を研究開発するという古い方法を踏襲する のではなく、飛行船第一号のステータスをはじめから3人乗りで300kg物資輸送可能な標準有人輸送飛行船に定めることで、「神舟」は 一歩で国際的な現役 有人輸送飛行船に名を連ね、同種飛行船の輸送能力に到達した。着手は遅くとも、出発点は高かったのである。
「神舟」シリーズの研究開発は中国の有人宇宙飛行プロジェクト体系建設の重要な構成部分であり、飛行船が有人宇宙飛行に成功したのと同時に、独自の完備し た有人宇宙飛行プロジェクト体系を確立したことで、中国は独自の知的所有権のある有人宇宙飛行技術を独力で開発できた。このように、体系の完備とともに、 そこまでの歩みも速かった。
「神舟」はまた、十分な地上実験に依拠しているのも特徴である。4回の無人飛行を通して、有人宇宙飛行の基本技術を検証し、第5回飛行実験で、有人宇宙飛 行の基本技術における問題を解決した。第 6回飛行実験では、より多い人数でより長い日数の有人飛行を実現し、有人飛行の基本技術を全面的に検証した。今年 打ち上げを計画している神舟7号有人飛行船では船外活動技術における課題を克服することを目標としている。第8回飛行実験では、ランデブードッキング技術 で難関を克服することを目標としている。これらは、他 の国では20〜30回の飛行実験を必要としてようやく成功したことなのである。
「神舟6号」の軌道周回モジュールは、居住モジュールとしての有人宇宙飛行ミッションを終えた後、軌道に留まって2年近い飛行を継続し、大量の科学実験データを獲得して、有人飛行船の応用効果を高めた。
「神舟」は宇宙飛行士の負荷減少という要求を満たすという前提のもので、落下地点の精度を絶えず高めている。特大パラシュートの研究開発に成功したこと で、「神舟」により高い回収能力が備わった。融 蝕を防ぐと同時に熱を遮断する、密度を変えた高効率の軽量防熱素材が、大気圏再突入時の防熱技術を解決した ことで、「神舟」に高効率な防熱性能が備わった。「神舟6号」の落下地点の精度は、誤差1,0 00m前後と精確な落下地点のコントロールを実現し、国際的 に先進的水準に達している。
「神舟」の研究開発では現代的なプロジェクト管理技術を採用しており、飛行船の研究開発と同時に、有人宇宙飛行船プロジェクト全体の管理技術成果を実践、総括することで、国 内外の宇宙開発専門家の認可を得、国際的なプロジェクト管理大賞を獲得している。
3.有人宇宙飛行船の技術的特徴と成果
(1)有人宇宙飛行船の特殊需要
衛星技術を継承した基礎の上で、有人宇宙飛行船システムは有人環境保障技術と宇宙飛行士の安全保障技術に重点的に取り組み、次のように各システムの問題を解決した。
有人環境保障システムは、宇宙飛行士の飛行の全行程において絶対的に保障しなければならず、異なる環境にあっても医学的な要求を絶対的に満足させなければ ならない。主に、気 体成分のコントロールを主とする大気環境コントロール問題、再突入過負荷および着陸衝撃を主とする力学環境コントロール、通風・主動流 体回路および再突入時の防熱を主とする温湿度コントロール、微 小重力環境下における気液環境コントロールを主とする生命保障支持、作業効率を主とする人工 コントロール支持などが含まれる。
宇宙飛行士の宇宙軌道における生存問題を解決すると同時に、宇宙飛行士の安全を最大限保障することが有人飛行設計の重要なミッションである。システム上、 最初の故障では正常な作業を保証し、2 度目の故障では宇宙飛行士の安全を保証することになっている。それゆえに、危険識別では安全を脅かす可能性のあるい かなる危険要素も見落とさないこと、コントロール措置ではシステム全体についての比較判断、検 証では出現するかもしれないモデルおよび最悪の状況を網羅す ること、評価においてはシステム全体について客観的かつ正確であることが求められる。
(2)有人飛行船の特殊機能
有人飛行船に必ず備わっていなければならないのは、環境コントロール機能、生命保障機能、揚力式帰還コントロール機能、再突入防熱機能、地上帰還カプセル回収機能、着陸緩衝機能、計 器表示および人工コントロール機能および緊急救命機能である。
(3)有人飛行船の核心技術における難関の克服
6回におよぶ「神舟」の飛行実験を通して、中国は再突入防熱技術、着陸緩衝技 術、揚力コントロール技術、飛行船の熱制御技術、微小重力条件下の気液分離技術、特大パラシュートの応用と製造技術、宇 宙飛行計器と人工コントロール技 術、微小重力条件下の防火および消火技術、避難救命技術における難関を克服し技術を開発した。
4.中国における有人宇宙飛行の今後の発展
中国における有人宇宙飛行は国家が確定した3段階の発展戦略に基づいて実施されている。第1段階は有人飛行船を打ち上げ、基本的に一体化されて、比較的 に整備された有人宇宙飛行のプロジェクト体系を打ち立てることである。第2段階は飛行船プロジェクトの基礎の上に長期運行・短期有人滞在(作業)の宇宙実 験室を打ち上げ、一 定規模の応用実験を展開することである。第3段階は宇宙ステーションを建設して、大規模な宇宙応用技術の実験を展開することである。 2004年に国家の承認を経て、有 人宇宙飛行の第2段階第1ステップは正式に始動した。将来的には宇宙飛行士による船外活動技術、宇宙空間でのランデ ブー・ドッキング技術における難関を克服し、標準有人輸送飛行船を建造し、長 期的な目標としては軌道上を自律飛行する宇宙実験室を建設する予定である。
有人宇宙飛行の第2段階第1ステップの実施を通して、我が国は有人宇宙往復輸送技術及び初歩的な有人長期飛行技術をマスターすると同時に、有人宇宙サービ ス技術の探求に着手し、有 人宇宙飛行の今後のミッションのため、また、我が国が全面的に有人宇宙飛行技術を開発、掌握するために、堅実な基礎を打ち立てる ことが期待されている。