Ⅳ. 発生・再生
中国の発生・再生の科学技術力はまだ強くないが、畜産バイオロジーなどの分野で着実な進展がみられる
この領域でも米国のリードは圧倒的である。日本と欧州は基礎的な研究水準ではほぼ米国と互角であるが、技術開発水準や産業技術力では米国との差はかなりあると考えられる。少 し遅れて中国と韓国が続いている。
2001年にヒト幹細胞研究所を開設し、ヒト肝細胞の樹立などの研究を進めてきており、質の高い論文が多数発表されるようになってきている。多国籍製薬企業のトップ企業であるグラクソ・スミス・ク ライン社が上海に幹細胞を中心にすえた創薬研究所をスタートさせると発表した。また、サノフィ・アベンティス社はガンの幹細胞研究で中国と提携することを発表した。これらのことは、中 国の幹細胞研究が一定の水準を上回ったことを示すとともに、中国における新しい医療実用化の実力が急速に高まる可能性があると考えられる。
組織・器官の形成研究で、多数かつ多人数の民族を抱えることを利点として、指等の形態異常を示す家系を多数保持しており、その責任遺伝子の同定から器官形成に迫ろうとする研究もある。組織工学分野では、上 海組織工学センターの設立等、再生医療の国家プロジェクトを実施し、皮膚や骨などの組織再生の研究成果が既に臨床応用されつつある。
畜産バイオテクノロジーの進展には目を見張るものがあり、遺伝子組み換えウシやカイコを用いた医薬品原料の生産に成功しており、臨床試験の段階にある。体細胞クローン動物作製では、ヤギ、ウシ、ブ タなどで成功し、世界第一例目の水牛の体細胞クローン作製にも成功しており、これら優良品種開発などの分野で研究水準、技術開発水準、産業技術力が着実に向上し、実用化が進み始めている。