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【13-19】トップ100革新企業に日本28社 中国企業3年連続ゼロ

2013年10月11日 小岩井 忠道(中国総合研究交流センター)

 米情報企業「トムソン・ロイター」が10月7日公表した「トップ 100 グローバル・イノベーター 2013」の中に、日本企業が28社入った。最も多かったのは米国の45社で、日本は2位。続 いてフランス12、スイス4、ドイツ、韓国各3...という順になっている。

 日本、韓国以外のアジアからは今年初めて台湾企業1社が選ばれている。中国は2011年にトムソン・ロイター社がこの調査・分析結果を公表して以来、3年連続で選出企業がない。

 「トップ 100 グローバル・イノベーター」の選出は、トムソン・ロイターが持つ特許に関するデータベースを基に、知的財産に詳しい外部組織の協力で開発した調査・分析手法が使われた。単 に特許の数だけでなく、中国専利局、欧州特許庁、日本国特許庁、米国特許商標庁という世界主要市場の特許当局で企業・機関が取得した基本特許の引用件数なども分析し、そ れぞれの特許の世界的な広がりと影響力も評価に加えられている。

 特許出願件数が年数十万件と急増しているにもかかわらず今年も中国企業が選出から漏れた理由については、国外出願が10%以下でほとんどが中国国内のみを保護対象にしていることが挙げられた。

 中国国内の特許については、2013年上半期に67万2,000件の特許(前年同期比26.8%増)を中国国家知的財産権局が許可し、企業からの発明特許出願が7年連続で7割前後を維持している、と 9月13日付の人民網が伝えている。

 「トップ 100 グローバル・イノベーター 2013」に選ばれた企業・機関を業種別で見ると、最も多かったのは「半導体および電子部品」の23。昨年の18から大幅な伸びを示した。こ の分野で初めてトップ100入りした4企業のうちに、台湾のTSMCと日本のオムロンが含まれている。最も特許件数が多かったのは、韓国のサムスン電子だった。

 「半導体および電子部品」に続く業種別分野の2位は「コンピュータ・ハードウェア製造」で11。3位は「自動車製造」の8となっている。日本・韓国・台湾のアジア勢で選ばれた企業が最も多かった業種は、「 コンピュータ・ハードウェア製造」と「半導体および電子部品」が並び、それぞれ7社。2位に「自動車製造」の5社が続く。

図1
図2

 業種別で注目されるのが、昨年の1社から3社に増えた「製薬」分野。新しく入ったアボット・ラボラトリーズとジョンソン・エンド・ジョンソンは、いずれも米国の製薬・医療機器会社だ。トムソン・ロ イターは「新薬開発が患者個々人や精密な診断を基に特定の患者セグメント(部位)を対象とする治療薬の開発が中心となる時代に入ったことに起因している」と見ている。

 特許に関しては、参加国の主張が複雑に絡み合っている環太平洋経済連携協定(TPP)交渉でも、特許権の対象拡大が課題の一つになっている。プレスリリースでは触れられていないが、人間や動物の治療法、診 断法、外科的方法の発明を特許対象にすることが米国の狙いの一つ、と指摘する声もある。

 トムソン・ロイターによると、トップ100に選ばれた企業・機関は、いずれも研究開発への積極的な投資や、特許による自社発明の効果的な保護などに力を入れており、ビ ジネスだけでなく株価上昇や雇用創出などでも実績を挙げている。トップ100企業・機関の総研究開発投資額は、米国の代表的株式指数「S&P500」に 入っている代表的企業500社の総研究開発投資額に比べて8.8%大きい。

 さらにイノベーションを成功させる上で、研究開発を促進し、知財インフラを育成する政策の役割の重要性にも触れ、米国、日本、フランスでは政府による研究開発の優遇措置が効果を上げている、とトムソン・ロ イターは指摘している。中国とともにトップ100に選ばれた企業・機関がなかった英国については、国全体の研究開発費が少ないことに加え、英 国経済が製造業から金融業を中心としたサービス業へと大きく移行しつつあることが、理由として挙げられた。トムソン・ロイターによると、2012年英国の研究開発費は395億ドル(約4兆円)で、1 位の米国4,086億ドル(約40兆円)、2位の日本1,410億ドル(約14兆円)、3位のフランス499億ドル(約4兆円)を下回っている。

図3
図4

トムソン・ロイター・プレスリリース「 2013年の世界で最も革新的な企業100社を選出」